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内発的動機づけの要素「有能性」

(このブログは、東洋経済新報社刊「LIFE SHIFT2」を参考に、私の思うところを書いています。スタートは、昨年の7月10日です。)

 内発的動機づけの要素の2番目「有能性」について見ていこう。

 社会に出て働いている大人にとっての学びは、やはり自分の置かれた立場、例えば会社員であれば、その会社業務にとって価値があることであってほしいだろう。

 私は大学卒業して最初に下伊那のある小学校の1年性の担任になった。学年1クラスの単級で、人数も43人という今ではあり得ない大きなクラスで大変だった。先輩に教えを乞いながら自分で計画をたて進めていくしかなかった。教員同士は基本的に立場は同等で、自分で自分を一人前にしていくしかない。そんな中で、私は研究授業者を毎年やった。自分の指導力を磨いていくしかないのだ。

 2校目に下伊那の山の中の僻地指定の学校へ転任した。ところが、小さな学校なのにまた単級の43人学級。今度こそ小さな学校に行って、一人ひとりの子と向き合えると思った期待は叶わなかった。でも、その頃には研究に積極的な教員になっていた。もともと探究心の強い面はあったので、重点研究グループの主任になって、先に立って授業研究に取り組んだ。先輩に言われてやらされる研究より、自分のやりたいことを自分で進める「自律性」の強い性分だったのだろう。

 その学校の職員の飲み会で、ベテランの教務主任が私に授業研究のことで「もっとこうしたら」というような話をしてきた。私は反論して自分の考えを戦わせた。校長は、とても尊敬できる人で、その議論に気づくと先輩の話を止めて、「若い人の意見を最後まで聞いてみよう」と面白そうに私の論に耳を傾けてくれた。自分の教員としての専門性を高めようとして努力していることをしっかりと受け止めてくれることで、自分の学びが自分や学校にとって意味のあることだと思わせてもらったように思う。「有能性」というのは学んでいることが価値のあることで、もっと自分を成長させたいという意欲や決意を高めるものなのだ。