· 

何歳でも学ぶ

(このブログは、東洋経済新報社刊「LIFE SHIFT2」を参考に、私の思うところを書いています。スタートは、昨年の7月10日です。)

 第4章「探索〜学習と移行に取り組む」の本題「学び続ける」に戻ろう。

 古代アリストテレスの説は、年齢を重ねるにつれて、頭脳は冷えて硬くなり、形が変わりにくくなる、つまり能力が衰退していくという考えだ。しかし、最近の研究で人の脳は年齢を重ねても、アリストテレスが考えていたよりはるかに強い可塑性を維持し続けるらしい。

 今年度の「歌と健康セミナー」で、脳の変化についてプレゼンで絵を見せて説明した。情報信号を受けわたすシナプス(神経細胞のつなぎめ)で、情報を受けとる側のスパイン(神経細胞の樹状突起の出っぱり)は、その大きさが刻々と変化するというのだ。古い記憶はすでにスパインがかなり大きくなっており、簡単には消えないので忘れにくい。スパインの変動によって不要な記憶を消して脳の記憶容量がパンクするのを防いでいるとも思われている。新しい記憶、つまり小さなスパインは変動によってすぐ消えてしまう可能性が高い。だから記憶を定着させるには、繰り返し学習してスパインを大きくする必要があるというのだ。

 このような変動する脳の研究が進んでいる。脳は柔軟な筋肉のようなもので、適切に訓練し、正しく使えば、いったん失われた能力も取り戻せる。そのような現象を神経科学者は、「神経可塑性」と呼んでいる。できるだけ頻繁に新しい活動や手強い活動に挑戦するのが賢明だと本ではまとめている。「学び続ける」ということについてさらに深めていこう。