(このブログは、東洋経済新報社刊「LIFE SHIFT2」を参考に、私の思うところを書いています。スタートは、7月10日です。)
これまで書いてきたように、社会の変化や若者世代の意識の変化が、“成人形成期”という青年期でも成人期初期でもないどっちつかずの状態を増やしてきているが、その状態を特徴づける5つの要素があるとされている。(参考:滋賀大学教育学部資料)
それは、①アイデンティティ探求 ②不安定性 ③自己焦点化 ④青年でも成人でもないという感覚 ⑤可能性/楽観性 の5つだ。
簡単に言うと、不安定な思いに揺れるこの時期、自分には何ができるか、何になりたいか、そもそも自分はどういう存在なのかなどと探し続け、何になりたいか選択しようとするが、その結果、非常に多くの見直しを必要とし、簡単には選択できない。満足できる職業や恋愛関係、結婚など将来に目を向けるが、退屈な仕事や離婚などかなりの大人たちが経験している負の可能性は想像だにしない。そんな感じだろうか。
そんなことを考えていたら、18祭(フェス)に出会えた。NHKのイベント番組で、18歳から20歳ぐらいの年代の悩みや課題と向き合い、その思いを歌にして共演するイベントだ。青年期後期のこれから社会に出ていこうとする世代が、自分と向き合い、仲間とぶつけ合うことで何かを見つけたいのだ。
今年は、「心音」というテーマで、YOASOBIがアーティストを受け持ち“HEART BEAT”という曲をつくり共演した。その歌詞は、上に書いた成人形成期の姿がたくさん現れているように思う。
(歌詞の抜粋)
「そう 悩みの種は いつも(いつも)誰かのこと 明日のこと 未来のことばかりだ」
「どんなふうに歩いていたっけ どんな僕が僕だったっけ ずっと遠くに見ていた ずっと先の未来は ずっと近くに来ていた」
「本当に大事なことは いつも(誰も) 教えてくれない」
「誰かに貼られた『らしさ』は要らない 誰でもない 自分の証 心で鳴らせ 世界でひとつの証」
番組に登場したある女子は、バレーボールチームのリーダーとして精一杯役目を果たそうと頑張り続けた。その結果、仲間からウザがられ、居場所を失い、自分を見失い、通信制の高校に移った。そしてそんな自分と向き合ってくれた養護教諭を目指そうとしていた。もちろん正解など簡単には出ない。ただ自分の進む道を決めたこの子はタフだ。その子の体験発表を聞いて同じような境遇の年下の子が涙が止まらなくなっていた。
人生が長くなった上に世の中の変化が激しくなり、マルチステージと言われるように選択肢が増えて、「自分とは何か、やりたいこと・やるべきことは何か」などと、自分と向き合うことが求められているのだ。
別のある子の言葉が気になった。「やめれば楽になれるなって思ってしまう自分がいるけど、それは……」“諦める”という言葉ではなく、“新しいドアを開ける”という気持ちで進んでほしいものだ。思い通りにならないことがあって当たり前、自分を信じて進むしかないと踏み出せる“成人期”へたどり着いてほしい。