(このブログは、東洋経済新報社刊「LIFE SHIFT2」を参考に、私の思うところを書いています。スタートは、7月10日です。)
「年齢に対する考え方を変える」を扱ってきたが、今日からは「時間に対する考え方を変える」だ。我々はどうしても目先のことに目をうばわれがちだ。私のことを考えても、間際になって夜中までかかって片付ける仕事の多さに反省することが多い。
本では、時間に対する見方をふたつ紹介している。「丘のてっぺん型」と「鳥の目型」だ。前者は、自分が丘のてっぺんに立っていて前方には未来があり、背後には過去があるというイメージだ。目の前のことが、過去や未来などよりも重要に感じられる。その目先の損得や間近に迫った出来事ばかりに目が行きがちになる現象を、行動心理学では「現在バイアス」と呼んでいる。
後者の「鳥の目型」は、トランプのカードが並べられた上を飛ぶ鳥のイメージで、時間で言えば過去や未来のことが並べられたカードのように俯瞰できる。人生を長い年月を想定した視点で見つめ、今何をするべきか問うときはその方が良いと思える。
私は「その日に追われている」というより、いろいろなことを幅広く考えてしまうので、将来のことを考えたり、過去を振り返って楽しんだりしているので、肝心の今日の仕事が遅れるようにも思う。それは「その日ぐらし」ではないように思うが、結果として仕事に追われている。
さて、その“今目の前にある厄介な問題”、例えば「家賃の支払いが迫っているのに給料の支払いがまだ先」といったようなことに目がうばわれるとまずい判断をすることになりかねない。(現在バイアス)そして、その不安に思考を支配されて、直近のことしか考えられなくなることを「トンネリング」という。心理学や行動経済学で使われる用語で、「トンネルの中にいると外界が見えなくなるように、何かに集中しているがゆえに他のことに意識が回らなくなっている状態をいう。そして結果として劣悪な意思決定、例えば利息の高い借金をするといったことが起きる。
ここまで書いてきたら、今日の退職校長会の講演会を思い出した。あの映画にもなった、栗林忠道中将の甥にあたる栗林直高先生の講演があったのだ。
栗林中将は、昭和19年5月、硫黄島を守る第109師団長を命じられた。戦ってもダメだと何度言っても聞く耳を持たなかった東条首相から直接「君の他には誰もいない」と哀願口調で言われたそうだ。
米軍は、12月8日(真珠湾攻撃を受けた「屈辱の日」)から昭和20年の上陸の日まで74日間にわたって連日砲攻撃をしたという。そして2月19日朝、第二次世界大戦の中で最大といわれる2時間半にわたる艦砲射撃に続いて上陸作戦を開始した。
(※これらの当時の状況は、原山茂夫著「栗林忠道、今井武夫物語」ほうずき出版刊にわかりやすくまとめてあるのでぜひお読みください)
米国メディアは「3日か4日で陥ちる」と見ていたというが、大変な損害を出し、最後のゲリラ戦を終えたのは6月11日だったという。そして、太平洋の島々の戦いで、戦死傷者合計が日本より米軍の方が大きかった唯一の戦いとなったという。
ただ忘れてはいけないのは、本土を守るためと言って、飛行機などをほとんど戻し、限られた弾薬等で戦ったことだ。硫黄島で頑張っているうちに東京大空襲も行われた。勝てるわけはないと東条らも気づいていたと思うが、後戻りのできないトンネリングの状態だったのだろう。未来を考えるというのは難しいものだ。