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人間としての可能性を開花させる3つの要素

(このブログは、東洋経済新報社刊「LIFE SHIFT2」を参考に、私の思うところを書いています。スタートは、7月10日です。)

 本で、人生のあり方を再設計するために3つの要素を取り上げている。もしも高度な知能を持ったロボットが人間をペットにする時代が訪れたと想定した時、人間は資源も余暇も経済的安定もふんだんに手にできるが、それは人間が望む人生だろうかと問いかけている。

「人は未来を見て希望と野心を抱き、自らの潜在能力を開花させたいと考える」「経済的に豊かになるだけでなく、帰属意識と自尊心を満たすことを、要するに有意義なアイデンティティを持つことを欲する」のだろう。

 この文を本から抜粋していたらニュースで報じられている「京アニ」の裁判のことが思い浮かんだ。自分の夢や才能が誰かに踏みにじられている思い、それを何かにぶつけないと自分の存在が守れない強い思い込みが、事件を起こす動機の背景だろう。もう一つ最近あったが、大勢を放火殺人するという信じられないような事件は、そのように自分の存在を失う恐怖や不満を誰かにぶつける方法以外に思い浮かばない状況が引き起こしているように思う。

「人間らしい満足のいく生活」というのは、単に経済的な安定度や時間的なゆとりでは決められないのだ。ではその「人間としての可能性を開花させる」には何が大事なのだろう。本では次の三つの視点が大事だとしている。①物語、②探索、③関係

 これについて先週の混声合唱団の指導で紹介させてもらった。今三つの歌を今年発表しようと練習しているのだが、それが上の三つの視点と重なる気がしたからだ。

 一つ目の「物語」は、組曲「水のいのち」の「川」とつなげた。「なぜさかのぼれないか、なぜ低い方へ行くほかはないか」と問いかけ、「いらだち」や「こがれ」に心をふるわせ、でも最後には「川は何かと問うことをやめよう」「私たちもまた同じように、石を魚をみごもるもの」「何かにこがれて生きるもの」と自身の人生を重ねていくのだ。誰しも「自分の人生がそのようにつぐまれていくものだ」と思うのだ。山を下り海へ流れ着く川に自分の人生を重ねて見つめ直すのだ。

 二つ目の「探索」は、「群青」とつなげた。東日本大震災の被害を受けた中学生が離れて暮す友に願いを込めて歌う歌だ。「あれから2年の日がすぎて、3月の風にふかれ君を今でも思う」と。「見上げた夜空に希望が光っているよ」「きっとまた会おう、僕らの約束は消えはしない」その日を願って生きていこうと思いを響かせるのだ。ともに離れた地で希望を持ち生きていこうと新しい道を探すのだろう。

 最後の三つ目「信頼」は、「アイノカタチ」とつなげた。「あのね大好きだよ あなたが心の中で広がっていくたび 愛が溢れ 涙こぼれるんだ」「大好きなあなたが そばにいない時に ほら 胸が痛くなって あなたのカタチ 見える気がしたんだ」「あのね あのね ずっと大好きだよ」人は誰しも「自分が心から大好き」と言える人を求めているのだろう。

 こんなふうにむずかしい本を読みながら、自分の人生や仲間を思い返して、心があつくなることそのものが「物語」であり「探索」であり「信頼」なのだと思う。その三つをさらに掘り下げて見つめていこう。