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実験に取り組む意思

(このブログは、東洋経済新報社刊「LIFE SHIFT2」を参考に、私の思うところを書いています。スタートは7月10日です。)

 社会の急速な変化に対し多くの人は(特にシニア世代は)遠くで起きている他人事に見えてしまいやすい。しかしあのマイナンバーカードは全国民が対象になっている話題だし、孤独な高齢者が犬型のおもちゃに話しかけると返事をしてくれるのも人気だ。しかもそれは、昔のように決められた言葉を繰り返すだけでなく、学習能力があって、次第に相手や場面に合わせて適切な返答ができるようになってきている。他人事ではなく誰もが新しい社会と向き合っているのだ。

 私は今日、高校の合唱班の後輩たちに活動支援金を届けに行ってきた。カイトソサエティという長野高校合唱班のOB・OG会だが、私が30年以上事務局長として運営に携わっている団体だ。その会長と二人で卒業生から集めた支援金を届け、カイトソサエティの説明もしてきた。孫ほどの年齢の離れた若者を仲間として迎えることができるのは嬉しい。

 彼らは卒業すれば「生徒」ではなく。「学生」「社会人」として大人の世界に入っていく。私は人生の先輩として大事にしたいことを伝えた。話の中心は「無形資産」についてだ。

 たとえ趣味の世界と思える合唱でも、真剣に向き合った時、大事な仕事の一環になり、私はコンクールの審査員もやった。また長野市小学校校長会のリーダーとなった時、一緒に訪問して隣にいるカイトソサエティ会長は、長野市教育長としてともに力を合わせる役職にいてくれたということも紹介した。卒業してそれぞれの道に進んでも、ともに歌った仲間とのつながりがどんな形で戻ってくるかわからない。自分の情熱を燃やした経験、それをともに味わった仲間を大事にしてほしいと伝えた。

 そして、カイトソサエティの活動はそれぞれ会員個人の選択のもとに行われることも話した。ホームページを確認してほしいこと。登録してくれたアドレスに連絡が入るので、自分で判断し行動に移してもらうことなど、ネットワークを利用しそれに参加した人がつながっていくのだ。ある意味自分がどう生きるのかそのアイデンティティをどう形作るかは自分で紡ぐ人生の物語なのだ。

 「ライフシフト2」の序文で最も力強く訴えるのは、「社会的開拓者になる覚悟をもつ」ということだ。急速な変化の中で答えの見えない時代「自分の可能性」を開花させ、「社会的開拓者」になる覚悟をもつということだ。私たちのOB・OG会は、入会届なし、会費なしという変わった団体だ。全てが個人の意思のもとに運営される。当番学年が行事を運営するのではなく、50歳以上も歳の離れた会員が力を合わせて運営する会なのだ。新しい社会のあり方を試せる面白い実験の場であると思う。