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破綻なのか恩恵なのか

(このブログは、東洋経済新報社刊「LIFE SHIFT2」を参考に、私の思うところを書いています。スタートは、7月10日です。)

 昨日は「フランケンシュタイン症候群」について触れた。強力なテクノロジーが猛烈なペースで登場し、それまでの生き方が通用しなくなる不安に人々は恐れ、「人間とは何か」という認識まで揺らぎかねないと本では投げかけている。

 例えば、「2030年までに、自動化により全世界で8億人の雇用が失われる」とか、「アメリカの雇用の半分以上が危険にさらされている」というような言葉がメディアに登場しているのだ。

 シニア世代に関心のある寿命についても、強力な不安が広がっている。中国では、2050年までに65歳以上の人口が4億3800万人を突破する見通しだそうだ。これは現在のアメリカの総人口を上回る。日本でも同じ頃、国民の5人に1人が80歳を越すとみられている。この長寿が祝福されにくい理由は、社会の高齢化が国家を破産させ、年金制度を崩壊させ、医療費を増大させ、経済を弱体化させると恐れられているからだというのだ。

 しかし、そのような負の発想は人類の可能性にブレーキをかけてしまう。人々が健康で長生きできることが人類にとって好ましい材料となるよう社会的な発明が必要なのだ。これまでの歴史でも同じように進歩の恩恵を受けるために人々は危機を克服してきたのだ。

 年齢を重ねる高齢の人たちがこれまでとは違う新しいストーリーを生み出していけるよう変革を求めていかなくてはいけない。最近のニュースを見ていると、生涯現役とかいって退職年齢を先送りし年金の開始年齢を遅らせたり、同じ職場で働き続ける環境を作るが給与は3分の1になって不満のある人たちが裁判を起こしたりなど、難しい問題が聞こえてくる。

 マルチステージの時代への転換が求められ、早い段階から別な働き方へチャレンジしたり、年齢を重ねたからこそできる職業を生み出したりといった新しい社会のあり方を切り拓いていくことが必要になってきているのだ。

 「老害」とかいって、高齢者がいることが社会のお荷物のような扱いがされる。例えばブレーキとアクセルの踏み間違いでお店に突っ込んだ事故がよくニュースで取り上げられるが、それが人口比で分析した場合、どの程度の割合なのか、若い世代の事故よりも重い件数なのか伝わってこない。また、そういう運転に課題のある人の事故を防ぐには、車の構造的な対応で起こりにくくなる改善も進められている。ギアチェンジが必要だった昔の車に比べて便利になっている分、ちょっとした操作のミスで大きな事故になる可能性も高くなっているのだ。そのうち、いや間も無くドローンを発展させて空を当たり前に飛ぶ車が実用化されると思うが、運転者が大きなミスをしても機械が自動的に危機を避ける機能を持っていないと大変なことになるだろう。変化と波乱をうまく乗り越え「恩恵」にすることが求められている。