· 

未来を思い描く力

(このブログは、文藝春秋社刊「脳科学は人格を変えられるか」を参考に、私の思うところを書いています。スタートは、昨年の12月12日です。)

 ポジティブ比(“ネガティブな感情体験”対“ポジティブな感情体験”の比)が1対3となることが大事だと前回書いた。その黄金比は、結婚生活や職場でも大事なのだ。本では、結婚生活の幸福度調査で、夫婦の離婚の境界は、ポジティブ比が1:5だと紹介している。職場は1:2かできれば1:3ぐらいだというのと比べると、幸福な結婚生活を送る方が難しい。互いに相手に悲しいことの5倍ぐらい良い思いもさせる努力が必要ということだろう。まあ、お互いに求め合うだけではなく、それぞれが趣味の世界や子どもとの関係などで良い思いを味わえることも大事かと思う。

 別な実験で、被験者に「過去のネガティブな出来事(親との死別やパートナーとの別れなど)」を思い出させた時、恐怖の回路である扁桃体に強い反応が出た。次に、同じ被験者に「同じネガティブな出来事が未来に起きたらどんな気持ちがするか」を想像するようにさせた。すると今度は扁桃体の反応はずっと弱くなった。特に楽天的な人は、未来に不幸なことが起きることを想像することがとても苦手な傾向があった。また、立ち直りが早い楽天的な人は、悲しい出来事があった時、ポジティブな感情もネガティブな感情も他の人より幅広く経験していることがわかった。感情を広い幅で経験する人だった。つまり単にポジティブな経験ばかりしようとしているとかではなく、いろいろな感情を受け止め、悪い経験も良い経験によって中和しようとする力が強いのだ。

 私は知り合いによると「俺だって大変なんだよ」とよく言う癖があるようだ。でも、考えてみると、そう言いながらいろいろ自分で背負い、乗り越えてきた気がする。目の前にあることから逃げようとせず、「こうなったいいな」と良い未来を描いて歩みを進めてきたのだろう。「俺には無理だ」「どうせろくなことがない」というふうに未来をネガティブに想像するのではなく、「やるしかない」と頑張ってきたように思う。実際今でもいろいろな仕事を…(昨日も一昨日も)めげずに取り組んでいる。

 脳科学研究が進む中で、不健康な心についてはとても多くのことがわかってきたが、「健康な心」についてはほとんどわかっていないとも書かれている。ただ、上に書いたように、幅広く悲しい感情とも向き合い、「俺だって大変なんだよ」と言いながら、「明日には」とか、「来週には」と課題(仕事や人間関係)が解決して良い結果となり、笑顔でいる自分を想像して歩み続けるのだ。そんなサニーブレイン(晴天脳)の自分を大事にしていきたい。