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ポジティブな感情と笑いのある生活

(このブログは、文藝春秋社刊「脳科学は人格を変えられるか」を参考に、私の思うところを書いています。スタートは、昨年の12月12日です。)

 前回は寄り道をして中野市の警官殺害事件のことを書いてしまった。予定していた「幸福になれる三つの要素」に話題を戻そう。

 第一番の要素は、「ポジティブな感情や笑いを数多く経験すること」と書かれている。それは多くの人が思っていることと重なることだろう。では、どうしたらそんな思いや笑いを日常に多くできるのだろうか。それについて本には具体的な事例は書いてない。

 私自身の人生を思い起こしても、そういったことにはとても大きな波があったように思う。表向きは頑張って人をリードするような仕事や活動に関わっていても、心の中ではストレスや寂しさを抱えていた時期も多かった。

 「笑い」一つとっても、面白い番組や落語や漫才を見ていれば確かに笑える。でも、本当に心を許し合える仲間というか、互いの存在を大事にし合えるような仲間がいれば、ちょっとした冗談や失敗さえも大きな声で笑い合えるように思う。いろいろ経験してきたシニア世代こそ、「老害」などと言われないように、「熟成」した世代となって、頑張っている若い世代を温かく受け入れられる環境を用意してあげたらどうかと思う。

 先日の日曜日に、男声合唱団の強化練習があって、終わってから仲間と飲みに行った。指揮者や副指揮者も参加してくれ楽しく過ごせた。副指揮者は大学四年生の女子でおじさんたちに囲まれて話に加わってくれた。「イタメシって知ってる?」と聞いたら「炒めたご飯のことですか」と答えてくれ大いに盛り上がった。このおじさんたちが若い頃、イタリアンレストランへ彼女を連れていったりして頑張った思い出話やそれを略して「イタメシ」って言うんだよとか、DCブランドだとか半世紀も前の話で楽しめた。

 次第に結婚や夫婦の話になって、指輪を見せて「うちはとても奥さんと仲良くやっている」という人の話から、「いやうちはできるだけプライバシーを大事にして自由な時間があった方が仲良くできる」とか、結婚観の話になって、もちろん愚痴も出てくる。「これからという若い人に結婚が嫌になるような話はやめろ」という人もいて面白かった。

 私はそれでいいと思う。「いい仕事について、いい結婚をして」などと説教めいた話より、おじさんたちの愚痴や悩み、アホな失敗などいろいろな経験談を聞くことで、生き方に幅や余裕が出てくると思う。若い人同士で誰がかっこいいとか、誰と誰は仲が良いなどと盛り上がるのとは別で、人生の面白さが広がっってくれたらいいと思う。世代を超えて対等に心を開いて話ができたらいいなあと思う。「熟成」シニアになって若い人と話せば、自分まで気分が若返る。注意しないといけないのは家族や身内で、どうしても「あなたのことを思っていっているのよ」とか、「私はこういうふうに考えて頑張ってきたのよ、だからあなたも…」などと自分の考えを押し付けやすい。一番自分のことを受け入れてほしい親にそんなことを言われたら、「笑い」が遠ざかるように思う。ポジティブな感情や笑いのある生活を大事にできる家族にしよう。