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悲観的ラベルづけの怖さ

(このブログは、文芸春秋社刊「脳科学は人格を変えられるか」を参考に、私の思うところを書いています。)

 中野市の警察官二人を含む4人の殺害事件が毎日ようにニュースで扱われている。次第に「自分が嫌いな“ボッチ”と言われている」という犯行の理由が見えてきた。以前このブログで紹介した“感情をコントロール”する方法の一つ「ラベルづけ」が逆に働いたように思う。

 「ラベルづけ」は、例えばたまたますれ違った知り合いに頭を下げたら無視して行ってしまった時に、「ひどい人だ」と思うことはありうる。そこで不満をためると、何もかもそれにつながって「あの人は私のことが嫌いなんだ」という強い思い込みに発展することがある。でももしかしたらその人は考え事をしていて気づかなかった可能性もある。「ラベルづけ」は、「きっと○○なんだろうな」と不満につながらないような解釈をして、自分の感情をコントロールすることだ。

 しかし、今回の事件では、「おそらく自分の一番嫌なことをあの人たちは話しているのではないか」と思い始めたのが止まらなくなって、自分の心の中で荒れまくって抑えが効かなくなった可能性がある。それは、10年以上も前から心の闇となっている「ボッチ」に象徴される経験が彼の行動を悲観的な判断へ引っ張っていっていると思われる。

「人格を変えられるか」というのがこの本の題名だが、それは簡単なことではない。ただ、この本の原題は“Rainy Brain,Sunny Brain”(雨天脳、晴天脳)だ。つまり、もっと晴天脳の仕組みや良さを知って、悩み事をいい方向へ転換する良さを知ることだ。

 先週紹介した“幸福になれる三つの要素”の第一番「ポジティブな感情や笑いを数多く経験すること」ができなかったのだろうか。事件を批判的に見るだけでなく、現代社会の闇である「進歩のパラダイス」を見つめ、自分の存在に不満を感じている人を無くしていきたいものだ。