(このブログは、文芸春秋社刊「脳科学は人格を変えられるか」を参考に、私の思うところを書いています。スタートは、昨年の12月12日です。)
昨日は、「進歩のパラドックス」というテーマで書いた。豊かな生活とは裏腹に不安や抑うつに悩む矛盾はどうして起きるのだろう。そんな昨日、日本中をさわがせる事件が起きた。私は生まれが中野市なので「なんで?」と驚いた。まだ事件の詳細がわからないので勝手な想像で書いてはいけないが、何となく自分の存在に不満か不安を持っているイラつきを感じる。些細なきっかけが大きな驚きと悲しみを生む結果につながる危険を思うと、みんながもっとその背景を他人事ではなく考えないといけないように思う。あり得ないことが身近に起きる可能性があることを。
本には、脳科学の成果を活かして治療的に障害を克服することも扱っているが、それだけではなくて、幸福になれる要素を三つ挙げている。脳科学の面からもたらされた提案だ。その三つの要素があわさった時、人は本当の意味で幸福になれると言っている。
一つ目は、「ポジティブな感情や笑いを数多く経験すること」。二つ目は、「生きるのに積極的に取り組むこと」。そして三つ目は、「今日、明日ではなくもっと長期的な視野で人生に意義を見出すこと」だ。
確かに教育相談も行なっているが、世の中には、「自分の思いとは相容れないことと向き合っていなければいけないこと」「諦めることで自分の心を破裂させないで押さえ込んでいること」「長く生きてもろくなことがないと思ってしまう自分」など、難しい問題がたくさんある。
昨日、長水退職校長会の総会があり、その後講演会があった。それは、学校を退職した養護教諭が自宅で「まちかど保健室」を開設し、悩む子どもや保護者に寄り添う活動をしているという実践に基づいた講演だった。テレビでも紹介され、著書も発行されているので興味のある人は読んでみるとよい(※1)。
始めた時は、「こんな所に来る人はいないぞ」と夫に言われたそうだが、逆に「そうだな」と肩の力をゆるめて自分のできることを素直な気持ちで取り組めたのが良かったようだ。上に書いたように、身近に自分の話を聞いて欲しい人はけっこういるのだ。「地域にも保健室」が必要なのだと私も思う。私は研究や講演、社会教育活動を中心にやっている人間なので、その分野で保健室の先生のように役立てればと思う。そういう意味で、上の三つの要素についてブログで深めてみよう。(続く)
※1 「川中島のほけんしつ」 著書「まちかど保健室にようこそ(川中島の保健室ものがたり)」白澤章子著、かもがわ出版