(このブログは、文芸春秋社刊「脳科学は人格を変えられるか」を参考に、私の思うところを書いています。スタートは、昨年の12月12日です。)
5月1日に「心をしずめる訓練」というテーマで、「マインドフルネス」と「ラベルづけ」を取り上げた。今日は「ラベルづけ」について考えよう。
誰しも「嫌なこと」「気分を害されること」「不安になること」など、生活の中でいろいろ出会う。その時の憂うつな気分をどう解消していったらいいのだろう。本で紹介してある例は、被験者に悲惨な場面を写したビデオを見せ、その恐怖反応を計測する。ただ、一部の被験者には、「これは本物の映像で、強い苦痛を感じている。」と説明しておき、また別の被験者には、「これは教育用のビデオで、登場する人は皆役者である。」と説明しておく。
結果は、誰しも予想できると思うが、後者の方が動揺する比率が低くなる。被験者が映像を見て、「これは本当の場面ではなく、演技なのだ」と自分の心に言い聞かせて冷静を保とうとするのだ。
これが「ラベルづけ」で、与えられた情報について「解釈するための思考を働かせる」ことで、抑制する脳が活動をはじめ、感情が落ち着いてくるのだ。つまり、映像を見て扁桃体などの恐怖の中枢から警戒モードが発令されるが、「この画像はどのようなものか、どういう意味を持っているか」など考えることで、前頭前野の抑制中枢が活性化し、恐怖感を抑える働きをしてくれるのだ。
やや話が難しくなったが、例えば仲の良かった人と街で会って、声をかけたのだが、無視をして歩いて行ってしまった時、「自分は嫌われたのだろうか」「何か失礼なことでもしたのだろうか」など不安になることはある。でも、「もしかしたらその相手の人が何か気になることを抱えていて気が付かなかったのかもしれない」と思えば、心の不安度は落ち着いてくる。
家族や仲の良い人が不機嫌な時、一緒になってイライラ、ハラハラすれば、状況はますます互いのために悪くなる。「ああ、今日は何か悩み事があるか、疲れ気味なのかも」と思えば、「今日は落ち着いてよく話を聞いてやろう」とか、「何か手伝えることがあるかな」などと接し方を変えられる。それは、自分にとっても心をしずめることになるのだ。
不安や恐怖に心が警戒モードになっている時、「これは、こういうことなどのだろう」と意味づけをすることが、「ラベルづけ」で、思考をはさむことで前頭前野が活性化し落ち着いた対応に修正することができるのだ。