(このブログは、文藝春秋社刊「脳科学は人格を変えられるか」を参考に、私の思うところを書いています。スタートは、昨年の12月12日です。)
「今、この瞬間の心やからだを意識的に感じ、受け入れる状態」に自分を置く「マインドフルネス」法について扱っている。雑念に振り回されることの多いこの時代に、仏教者の坐禅のように集中する技を会得するのだ。それは、精神失調の治療に効果があることがわかってきて、世界中で盛んに研究されて利用されてきている。
昨日の右脳と左脳の反応の変化についての研究は、インフルエンザワクチンの接種した後の抗体の数の変化にもプラスの反応があったことが紹介されている。
マディソン市のある会社の従業員から選ばれた被験者は半分に分けられ、片方はマインドフルネス法による介入を行い、残りの半数は、そのまま待機させられた。その検査の介入時と終了直後、さらに4ヶ月後の計3回脳につけられた電極によって脳内の活動が測定された。さらにそれに合わせて、被験者全員にインフルエンザワクチンの接種も行った。
その結果、マインドフルネス法の瞑想を実践した被験者には、脳の活動にも免疫機能にもプラスの変化が認められた。脳の電極のいくつかから右脳から左脳への活動の移行が見て取れ、さらに、体験したグループの人の方が、インフルエンザの抗体が非常に多く作られていたのだという。マインドフルネスがストレスの低減に影響を及ぼす体の働きの活性化をうながすと同時に、病気に対抗する仕組みも活発になるのだと推測される。
コロナ禍でワクチン接種の是非が問われているが、「自分にとってどうか」というより社会的に感染爆発を抑える取り組みであるという理解や、それを自分の体の中でも効果的に利用しようというようなポジティブな理解が、脳科学的な視点から見ると自分のためになるというのは面白い。体と頭と心は関連して働いているのだ。身の回りのことを何かと否定的に見る人もいるが、それが結果として自分自身を弱らせているようなことにならないよう気をつけたいものだ。