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心をしずめる訓練

(このブログは、文藝春秋社刊「脳科学は人格を変えられるか」を参考に、私の思うところを書いています。スタートは、昨年の12月12日です。)

 いよいよ最終章である第6章「抑うつを科学で癒す可能性」に入ろう。

 この章の前半には、強迫性障害などの不安な精神状態をどう理解し治療していくかといった最近の研究に基づいた解説が続く。俳優のディカプリオの例を挙げるなどして興味深く読めるので関心のある人はぜひ自分で読んでほしい。このブログでは、一般の人の日常に直接つながる内容を大事にしたいので、そこは飛ばして前に進みたい。

 誰しも気に病む出来事に悩むことがある。どうしたら心をしずめることができるのだろう?そういった「心をしずめる訓練とは」とか「怒りや嫉妬などの負の感情をどうやって減じるべきか」ということについてまず取り上げたい。

 今日中に仕上げなくてはいけない仕事に向かっている時、まわりから聞こえてくる雑音に気が狂いそうになることがある。イライラがつのって家族を怒鳴ったり、泣き叫んでその場を逃げ出したりということを多くの人が経験している。心が荒れている状態だ。

 それを治めるため、純粋に何かに集中する方法として「瞑想」を取り上げている。「マインドフルネス」という言葉を聞いたことがあるだろうか。「今、この瞬間に経験しているものごとに注意を向けること」だ。確かに、夢中になって何かをしている時は、周りの音が聞こえなくなる。

 もう一つは、「ラベルづけ」だ。嫌な出来事に遭遇した時、それに振り回されるのではなく、「これは、こういうことだから」と解釈をし所定の場所へ片付けるように整理することで、頭から過ぎ去らせる。この二つについて、次回から具体的に扱っていきたい。

 第6のブログの構想を練っていたら牧野富太郎のことを思い浮かべた。今、朝ドラで扱っている植物学者だ。彼は、一筋に植物研究に取り組んだ。彼の言葉を紹介しよう。

「学位や地位など私には、なんの執着も感じておらぬ。ただ、孜孜(しし)として天性好きな植物の研究をするのが、唯一の楽しみであり、また、それが生涯の目的でもある。」

 彼の心の中で、世間の余分な雑音を邪魔と考え、ひたすら植物研究に取り組んだその強さの中に、学びたいことがたくさんあるように思う。