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進化の中で築かれてきた適応力

(このブログは、文藝春秋社刊「脳科学は人格を変えられるか」を参考に、私の思うところを書いています。スタートは、昨年の12月12日です。)

 年度当初、しかもコロナ禍対応が次のステップに入ったこともあり、さまざまな活動がスタートし始め、毎週いくつも会合が入っている。地域の仕事も3年近く活動を自粛していたことが多く、過去の資料を参照しては計画作りを進めているが、皆初めての経験のような人が多く、難しいとの声が多い。

 自宅で過ごすことが多かったせいか、体も鈍っているようで関節があちこち痛かったり、尻の筋肉が落ちているような感じがしたりと思いのほか劣化が進んでいるようだ。自分では気付きにくいが脳の退化も進んでいるのかもしれない。前回、老いても脳細胞は作られるという話を載せたが、大事なことだと思う。社会活動再開を活かして頭も使おう。

 進化の歴史の中で我々人間の脳も大きく進化してきた。大脳皮質が大きく成長すると同時に、その下にある古い領域とのつながりも築いてきた。恐怖や快楽の反応を受け持つ扁桃体や側坐核などの古い組織は、石器時代のままにとどまっているのではなく、大脳皮質の高次な領域から神経伝達物質が降り注いだり、ニューロン同士の結びつきが強くなったりすることで、古い組織をコントロールできるようになってきている。つまり他の動物よりも恐怖や興奮をずっとうまく調整する能力を持っているのだ。

 いよいよこの本の本題である、脳の学習能力について触れていく段階に入った。人はそのレベルの高い学習能力を持ったおかげで、自分を取り巻く環境の変化へ対応する適応力を持つことができたのだ。