(このブログは、文藝春秋社刊「脳科学は人格を変えられるか」を参考に、私の思うところを書いています。スタートは、昨年の12月12日です。)
受容体(レセプター)は、簡単に言うと外からの情報を受け止め、それに対応する働きを起こすスイッチのようなものだ。昨日のブログで、母親ラットの愛情がストレスに強く対応する遺伝子発現に関わっていることを紹介したが、その研究について紹介しておこう。
脳内で学習や記憶に重要な役割を果たす「海馬」に、「グルココルチコイド受容体」というものが大量に存在している。その受容体はストレスの切り替えスイッチのようなもので、ストレスに対する反応をオンにしたりオフにしたりできる。この受容体が少ないと、ストレスに対する反応が増大し、問題をいつまでもくよくよと考え、すみやかに乗り越えられない。
その研究で、母親からの愛情が薄かった個体(ラットの子)は、そのストレスに対する反応を起こす働きにブレーキがかかっていることが多いことがわかった。母親の愛情といった古典的な環境要因が、子どものストレスへの耐性に強く影響していることが脳科学の面からわかってきたのだ。
第四章「遺伝子が性格を決めるのか」について書き進めてきたが、要するに人間を取り巻く環境が遺伝子の働きに影響を及ぼし、楽天的な人生観やストレスに強い性格を作り出すことに影響するのだ。
自分(私)はどうなのだろう?いろいろ振り返ってみると根本的に楽観的な脳ではない気がする。どちらかというと「脆弱で感じやすい」方だと思う。周りの人の評価をけっこう気にするタイプだ。気楽にバリバリやっているように思われているような気もするが、実はちょっとしたことでも誰かが不機嫌な表情をすると、何か失礼なことを言ったかなとか気にしてしまう。だから逆にうれしいことや楽しいことには強く反応し、幸福感を持ちやすい傾向が強い。
また、若い頃、モテモテだったように思っている人もいるかもしれないが、そんなことはなくて、大勢の人に好かれるより、基本的に一人の人に本気で思ってもらうことの方が大事だと思うタイプだった。けっこう周りの状況をしっかりとらえ、より深く接するのだ。ただ、そんな本気の人ができると、それに甘えて、よその素敵な人に目が向いてしまう欲張りな傾向があった気もする。
これで第四章は終わって、次回からは第五章「タクシー運転手の海馬は成長する」に入ろう。