(このブログは、文藝春秋社刊「脳科学は人格を変えられるか」を参考に、私の思うところを書いています。スタートしたのは、昨年の12月12日です。)
扁桃体を切除したリンダは、「個人的空間の感覚」も忘れてしまったという。被験者は面識のない実験者に歩み寄り、「自分にとって快適」と思われるぎりぎり近くまでいくように指示される。ほとんどの被験者は、相手から平均64センチの地点だった。彼女は、赤の他人と鼻がぶつかるほどの距離に立たされてもまったく不快感を抱かなかった。扁桃体の損傷は、「個人的空間はどのくらいの大きさか」という感覚も消し去ってしまったのだ。相手との社会的関係、信頼感などを判断する社会性のベースが欠けてしまった。
脳の回路の反応性にも個人差があり、さまざまな状況にどう反応するかが決まる。その積み重ねから人格は形成される。小さな子にも、くすぐられればすぐに笑ったり吹き出したりする子がいる。少し大きくなると、自然によその子に近づき、一緒に遊ぶことができる。
逆に神経質でいつも誰かになだめてもらわないといけない子もいる。レイニーブラウン(雨天脳)の傾向が強いと、どんな状況でもついマイナス面に着目し、危険を避けようとする。その傾向が強いと心理学的には、〈神経症〉あるいは〈特定不安〉と分類される。歯医者に行く時とても不安、注射をする時とても緊張する、慣れない人間関係の中で動揺したり疲れるといった例があるだろう。
一般にレベルの高い危険に対する反応は誰しも強くあまり差はないだろうが、問題は「下限のレベル」だ。特定不安度が高い人は、普通の人に比べて、警戒モードに切り替わる下限が低いらしい。他の人に比べて小さな危機にも反応しやすいのだという。この脳科学と人格については、この本の大きなテーマであるので、どのように改善することができるのかまた後日考えていこう。