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すべてを支配する恐怖の回路

(このブログは、文藝春秋社刊「脳科学は人格を変えられるか」を参考に、私の思うところを書いています。スタートしたのは、昨年の12月12日です。)

 恐怖に関する体験を書き始め、今日は、城山小学校校の思い出を書こうと思っていたが、思い出話ばかりで論を後にしては重要なポイントを伝えられないので、また後日脳科学とつなげながら私の人生を振り返ろう。

 脳の回路について第2章で触れたが、緊急事態に対する脳の回路〈恐怖の回路〉は、一瞬で作動し、全てに優先する(支配する)のだ。本には、北アイルランド抗争で恐怖を体験した女子が、車のパックファイアを耳にして歩道にうつ伏せになり動けなくなった例を挙げている。

 本の著者が子供の頃の思い出だが、一緒に歩きながら楽しく会話していた友だちがいないことに気づき振り返ると、10mほど後ろの歩道に伏せていたのだという。バックファイアは、今ではほとんどないが、昔の車には度々あった。点火の不具合で外にガスが出てからボンと音を立てて爆発するように燃焼するのだ。抗争の地から避難してきた彼女にはそれが人を殺す恐怖の音だったのだ。怖い体験が一瞬でよみがえったのだ。

 彼女の中で恐怖の回路が作動し、緊急システムが血流にアドレナリンを放ち、呼吸や心拍数が増大し、発汗が起こったのだ。そして危機を回避するために地面に伏せたのだ。いったんスイッチが入ると、恐怖の回路は他のすべてに優先するという。

 今、ウクライナ紛争が続き、突然身近な人がミサイルに命をうばわれる恐怖を体験している人がたくさんいる。ニュースで知るのと、目の前で体験するのでは全くその恐怖感の刷り込みは異なるのだと思う。先ほどNHKでウクライナ現地での取材番組を放送していたが、防空警報が鳴っても映像に映った人は冷静に避難していた。これも、身近に体験した人はパニックになって動けなくなってしまうかもしれないし、逆に繰り返し目にして当たり前になって危機感が麻痺してしまう人もいるかもしれない。

 その恐怖のシステムの中心にあるのは「扁桃体」だという。これはかなり研究が進んでいるということで、もう少しそこを調べていこう。