(このブログは、文藝春秋社刊「脳科学は人格を変えられるか」を参考に、私の思うところを書いています。スタートしたのは、昨年の12月12日です。)
楽観的な認識に支えられ行動を起こすことが生活に良い影響を及ぼすことにふれてきた。「事態が改善していく」、「自分は恵まれている」と思うからさらに前進できるのだ。楽観が本質的には認知上のトリックなのだが、それがあるから毎朝人間は寝床から起き上がることができるのだ。楽観は、人間が生き延びるために自然に積み上げてきた重要なメカニズムであると本で説明している。なので私たちは、ものごとがみな悪い方向に向かっているように見える時でも、前に進んでいくことができるのだ。心理学者はこれを「オプティミズム・バイアス(楽観的偏向)」と呼んでいる。
このオプティミズム・バイアスは、「前向きな幻想」とも呼ばれる。そこには欠点も隠されている。たとえば「自分は絶対に癌にはならない」とか「オレオレ詐欺なんて自分は絶対大丈夫」などと言っている人がかえって危ないのだ。体調の変化を無視したり、対策に無関心だったりすることで、危険を招き寄せているのだ。
実は、私もこの年末年始は自分の危機を感じることがあった。毎年楽しみにしている酢だこの味が感じられなかったのだ。まず、「あのスーパーはこんなものを売っているのか。味がなさすぎる。」と思った。しかし次に自分でなますを作ったのだが、きちんと分量を測って入れたのに味がしない。大変なことになったと思った。
まずはコロナ感染で味覚異常が起きると聞いていたので不安になった。しかし、コーヒーの味や噛んでいると旨味は感じられたので、舌の異常かと思い調べた。最初に出した結論は、「亜鉛不足」だった。もっとも亜鉛を取りやすい食事は、「牡蠣」とか「ナッツ」だったが、どちらもほとんど取っていなかった。さっそく、毎日牡蠣フライやナッツを食べた。
そこで「もう大丈夫」と思っていたなら、まさに「オプティミズム・バイアス」前向きな幻想に乗せられ、「自分は治る」と信じて過ごしていたことだろう。しかし、私は、本当の原因がわからず素人考えで対策をとったつもりでいるのはまずいと考えた。ネットで調べたら耳鼻咽喉科が良い、しかもおすすめの医院として、度々かかっている我が家の近くの医院が紹介されていた。さっそく正月休み明け診てもらった。
もらった薬は、なんとめまいや鼻腔の治療の時と同じものだった。まずは神経の改善に取り組み、1ヶ月様子を見て、その結果で亜鉛の検査もしましょうとのことだった。そして、1週間もしないうちに改善が見られ、2週間ほどでほぼ戻ってきた。その間に、味を感じるのは舌の味蕾という組織の異常が原因として挙げられている記事を見て反省した。12月の半ばごろ、歯を磨いた後、舌の色がやたらに不健康な色に見えて、舌ブラシでゴシゴシ磨いてしまったのだ。それが、味蕾を傷めたのではないかと思う。今は、大好きなリンゴのかすかな甘みも楽しめるようになってよかった。
前向きな幻想があるから生きていけるのだが、それに惑わされて「自分は大丈夫」と対策を取らないのは危険なのだ。誰にでも、もちろん読んでいるあなたにも毎日その危険はやってくる。運転していても、自分は大丈夫と注意が散漫になってはいけない。