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楽観的なリアリスト

(このブログは、文藝春秋社刊「脳科学は人格を変えられるか」を参考に、私の思うところを書いています。スタートしたのは、昨年の12月12日です。)

 脳の構造や働き、そして連携、さらにそれに関わる神経伝達物質など、脳科学に関する説明が続いた。専門的な話題に興味のある人は関係の本を読むと思うので、このブログはもっと日常の生活との関係に戻していこう。

 サニーブレイン(晴天脳)の仕組みは、昨日まで触れてきたようなものだ。ただ、「楽観」というのは単にいつも「上機嫌でいる」ということではない。当たり前の生活の中でも、その意義を見つめ積極的に良い方向を選び出そうとしたり、困難な状況でも自分なりに精一杯対処しようと努力したりし、自分で過ごし方をコントロールできるということだ。本には「良いことも悪いことも受け入れる能力があってこそ、楽観はプラスに作用する」と書いてある。(p82)

 昨日のブログに書いたが、ドーパミンは喜びや快楽に関わる神経伝達物質だが、「欲する」という働きを担っている。単に夢のような生活を思い浮かべてうっとりしているのでは何も変わらないのだ。この章の初めに書いた「修道女の日記」の事例が教えてくれるのはそこだと思う。楽観的な日記の人たちが長生きする傾向が強かったのは、いろいろな状況を受け入れ、自分なりに良い方向へ歩み出す生活を続けてきたからなのだ。

 本には「創造的かつ粘り強く行動する姿勢がなければ楽観は力が発揮できない。」と書いてある。ハッピーな思考をするだけでなく、「楽観的なリアリスト(現実主義者)」なのだ。自分の運命は自分でコントロールしなければと思っているのだ。9.11のニューヨーク貿易センタービルのテロ事件のことが本には取り上げてある。

 ニューヨーカーは、それまで「自己中心的で」「粗野で」「短期」だと思われてきたが、事件を境に温厚で地元意識に富んだ市民に変わったというのだ。1年後の調査で、多くの不安や動揺はもちろん残っていたが、多くの回答者から「以前よりも尊大でなくなり、以前よりも親切になった」とか「地域や人とのつながりを以前より大事にするようになった。」と回答があった。

 これは日本で最近続く水害などでも見られる。困難に遭遇して人は立ち上がる。「楽観」という言葉では表せない厳しい状況に向き合う。その「リアリスト」は、心の中で「自分でなんとかしなくては」「皆で信じ合っていこう」と必死で心に強くなることを呼びかけているのだ。