(このブログは、文藝春秋社刊「脳科学は人格を変えられるか」を参考に、私の思うところを書いています。スタートしたのは、昨年の12月12日です。)
脳の各部分が担っている役目があること、そしてそれらが連携することで考えたり実行したりしていることに触れた。1,000億を超えると言われるニューロン(神経細胞)が脳の中に存在し、それぞれが10,000に及ぶ他のニューロンとコンタクトできるのだ。そのニューロン同士の会話は、電気的信号によって行われているとされていたが、研究が進む中で、その情報のやり取りには神経伝達物質が関わっていることがわかってきた。
枝を張っているようなニューロンの先端(腕のようなもの)シナプスに電気的信号が送られると、神経伝達物質が放出される。それがシナプス同士の狭い隙間を漂い、相手方のシナプスの受け取り口であるレセプターに取り込まれる。ただ鍵と鍵穴が合うような相性の良い場合に限られ、取り込まれた時に受け取った方のニューロンに電気信号が発生し情報が伝えられていくのだ。
本で扱われている神経伝達物質は、ドーパミンとオピオイドだ。「快感」(セックスでもドラッグでもチョコレートでも、ゲームをすることでも)によって刺激を受けると、側坐核はドーパミンとオピオイドを分泌する。この化学物質を媒介にして細胞同士がコミュニケーションを行う。ただ、研究が進む中でその役割の違いが明らかになってきた。オピオイドは「甘いものをより甘く感じる」働きを増幅する。そして、ドーパミンは「欲する」働きを増幅させるというのだ。快く感じた経験を「欲して」さらに反復したいと思わせる作用を持つのだ。
楽観主義者の晴天脳(サニーブレイン)のような働きもこういった脳の各部分の連携や、神経伝達物質の分泌する仕組みによって形成されているのだ。ドーパミン(喜び、快楽など)やノルアドレナリン(恐怖、驚き)などの情報が暴走しないためにセロトニンが働いている。そういったもののバランスが精神の安定のために必要なのだという。セロトニンが低下すると、攻撃性を増したり、不安やうつ・パニック症などの精神障害を引き起こす。その低下の原因に、女性ホルモンの分泌の減少、更年期障害と関わりがあることが知られてきた。