(このブログは、文藝春秋社刊「脳科学は人格を変えられるか」を参考に、私の思うところを書いています。スタートは、昨年の12月12日です。)
本の第2章の前半は、快楽のシムテムについて脳の仕組みやその働き、続いて神経伝達物質のことが扱われている。ブログでそれを伝えるのは難しいが、ポイントだけ押さえておこう。
脳の一番下の、脳と脊柱が接続している部分には、生命活動に不可欠なたくさんの組織がおさまっている。呼吸をしたり血圧や体温を適正に保ったりするなど、生命の維持全般に関わる仕事をしている。
それより一つ上の真ん中の階には、感情や記憶をつかさどる重要な器官が多く含まれている。この部分は、さらに上にある大脳皮質より進化上ではずっと古い。この「中脳」と呼ばれる部分には、「扁桃体」「側坐核」「海馬」など風変わりな名で呼ばれ、他のさまざまな生物の脳にも類似のものが存在する。
その上の中脳を包む大脳皮質は、人間の進化の過程で大きく成長し、頭蓋骨にきちんと収まるために細かく折りたたまれている。これが言論や推論、創造など人間特有とされる属性の多くを受け持っている。
大きく三つの構造で説明したが、それらが全体で統制のとれた活動をするために連携しあっている。本では、“快楽を感じなくなった青年”とか、“快楽のために電流を求め続けるラット”の実験など、脳の働きや快楽に関する脳の役割分担を事例で説明している。
一つ紹介すると、抑うつに苦しみ毎日のように自殺願望の悩まされる青年の脳のあちこちに電極を取り付け、一つずつ順に電流を流しその反応を調べた。そして、側坐核に埋め込まれた電極に電流を流した時だけ、はっきりした反応を示した。「気持ちが良くて、暖かい」と彼は言い、自慰や性交をしたいという欲望を感じた。
ただ、その快感によってスイッチが入ると、その情報が前頭前野に伝えられ、その衝動を抑えようとする。車のアクセルとブレーキのように連携していくのだ。上の青年は、電極のスイッチを3時間のセッションで1500回以上も押し、終わると強い不満をあらわにしたというが、そのコントロールする仕組みが重要であることがわかる。