(このブログは、文芸春秋社刊「脳科学は人格を変えられるか」を参考に、私の思うところを書いています。スタートは昨年の12月12日です。興味のある人はそちらからご覧ください。)
いよいよ第1章「快楽と不安の二項対立」に入ろう。
毎日手が空くとのぞいてみるYouTubeで、特に調べたいことがない時は、猫や犬の可愛い姿に癒される。仔猫はちょこちょこ動いているのを見るだけで面白い。同じ親から生まれた兄妹の猫で、性格が違うのも面白い。姉の方が人懐こくいろいろなことに興味津々ですぐ関わってくるのに、弟の方が警戒心が強く知らない人が来ると物陰からのぞいていたりとその基質が行動に現れる。
「基質」というのは、人間や哺乳類などの動物が持っている刺激などに反応する行動特性である(ウィキペディア)猫の例を取り上げたが、同じようなことはどこの家庭にもあるだろう。側から見るとそっくりな双子の兄弟姉妹でさえ、親から見ると全く性格は違うという例も多い。そんな気質が、環境やさまざまな出来事と関わり性格が形成されていく。
また、人生の中で誰しも悲しいことなどいろいろな出来事を経験する。そんな出来事が人の性格に影響を及ぼすことも事実だ。
その「出来事」と「基質」のどちらがどのくらい人が感じる「幸福度」に影響を及ぼすかを解明しようとした研究がある。オーストラリアのメルボルン大学の研究だ。その詳細は省くが、結論を言うと、「人がどんな経験をするかは基質に影響される」と言うのだ。
スタートした方向と結果が大きく転換している。幸運な人には何度も幸運が訪れ、一方別離や失業など不運に何度も見舞われている人もいる例が多い。気質の違いが、経験する出来事に影響を及ぼしているのだ。「基質と出来事は、それぞれ別個に幸福度に影響する」という前提そのものが誤っているのかもしれないと気づいたのだ。つまり、楽観的な人はポジティブな出来事を、悲観的な人はネガティブな出来事をより多く経験していた。気質はむしろ、起きる出来事に強い影響を与えているようだったのだ。
子どもがどんな社会に生きることになるかは、運や偶然では決まらない。その子の感情のスタイルが、その子を取り巻く世界を規定していく。世界にどう向き合っていくかによって環境は変化し、どんなチャンスに巡り合うか、どんな問題に遭遇するかも変化すると言うのだ。
とするとこれを読んだ親世代は、自分の子に「明るい気持ちで、物事に積極的に関わり、チャンスを活かす人間にしなければ」と思ってしまうだろう。そのあたりをもう少し掘り下げていこう。