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脳の可塑性

(このブログは、文藝春秋社刊「脳科学は人格を変えられるか」を参考に、私の思うところを書いています。

 あなたは、「楽観的な方ですか?悲観的な方ですか?」そう聞かれた時、どう答えるだろう。同じ厳しい出来事に出会っても、確かに人によって反応は違う。一度自分は悲観的なタイプだと思うと、何かにつけてそういう方向の結論につなげがちかもしれない。

 コンピュータの画面にポジティブな画像とネガティブな画像を瞬間的に見せて、被験者の反応の傾向を調べる実験のことが本に(上述)紹介されている。確かに個人によって、認識のスタイルが根本的に異なっている傾向が見られる。それは、同じ情報が脳に伝わった時、報酬や気持ち良いことなど快楽に反応する領域が優先されて受け止めるか、脳の危険や脅威に反応する領域が優先されるか、そういった微妙な個人差があるらしい。そして、それは、長い時間をかけて独自の神経のネットワークが形成されてきた結果であるのだろう。

 ただ、それは非常に微妙な神経の分かれ道の差であり、しかも人間の脳には変化する可能性があるのだ。ものの見方が、(言い換えれば心の癖や偏りが)わずかでも変化すれば、脳の構造は再形成されるのだと本ではまとめている。それを「性格を変える」と表現するとやや誤解を招きそうだが、同じ困難な出来事でも、ものの見方を変えてみることで、乗り越えられた経験は誰しもあるのではないだろうか。そんなことの積み重ねを経験することで、アフェクティブ・マインド(心の姿勢)は、変容していくし、人生そのものを変えることができるのだ。

 シニア世代は心理学的に熟成した世代だ。若者のような素早い判断や吸収する能力は劣るかもしれないが、いろいろな角度からものごとを判断し、適切な結果を出すことでは長けているという。もちろん中には、頑固で聞く耳持たない的な人もいるが…。だからこそ自分と向き合い、自分がものごとをどう受け止め、どう行動に結びつけているか整理してみることが大事だ。

 私の目の前にいる相手がどんな状況に置かれ、何を思い、私に何を期待しているか、やわらかい心で受け止めることができるようになりたいものだ。この本を読みながら、その能力をアップしていこう。自分の脳の可塑性を信じて鍛えていこう。