宇宙船地球号

 Macパソコンを世に出したスティーブ・ジョブスが、「ハングリーであれ、愚かであれ」と若者に語った話をもう少し掘り下げよう。

 この言葉は、ジョブスが若い時にとても影響を受けた人の言葉だ。バックミンスターフラーという思想家で発明家が残した。フラーは、若い時に事業に失敗し、死に場を求めて海に行ったらしいが、そこで新しい思いを抱き、これまでとは全く違う生き方を模索する。「全てを他の人のためになることのために生きよう」というものだ。

「本当にやりたい仕事でなければやらなくて良い。子ども時代の気持ちに戻れ」と言い、他の人が思い付かないような発明に精力を注いだ。社会的には、変人扱いされることが多かったようだ。“宇宙船地球号”という言葉で、この世界にいる人々に新たな視点で生きることを訴えた。そのあたりは面白いので、興味のある人はぜひ調べてほしい。

 今ウクライナでは、今にも世界大戦になりそうな危険な状況にある。おそらくいつまでも悲しみを抱え相手を憎しみながら戦い続けるか、(あってはならないが)世界を核の被害に巻き込んで地球の生きる環境を破壊する状況に追い込むか、ほんの一部の人にその選択が預けられている。どちらになろうと、第一次、第二次世界大戦のような勝ち負けはないように思う。最もひどい場合は、地球人皆が犠牲者となって終わるのだ。

 フラーは、愚か者なのではなく、社会の常識というものに振り回されず、大きな視点で物事を見つめようとしたのだ。そして、最も大事なものとして見えてきて訴え続けたのが、「一つの船に乗り込んだ仲間という思いで、助け合ってより良い航海を求める“宇宙船地球号”」という願いなのだ。