長野盆地に出て傾斜が緩くなった千曲川の両岸には“自然堤防”が発達します。長沼のあたりを見ると、県道付近の津野や赤沼などの古くからある集落付近は、自然堤防上に発達した村です。それでも玅笑寺本堂の柱に記録されたように何度も大きな水害を被っています。
信濃毎日新聞社刊「戌の満水」のP144にこの長沼付近の1947年の航空写真が載っていますが、千曲川のすぐ西側付近の果樹・畑作地帯が黒く見え、それより西側の浅川を挟んだ付近は灰色っぽく見える水田地帯にはっきり分かれています。その辺りは、“後背湿地”で、ほとんど住宅はなく、水田が広がっています。
川は平地に出ると蛇行を繰り返し、運んできた土砂を両岸に積んで自然堤防を作っていきます、その背後には、低い土地や旧流路の名残の三日月湖などが残り、川が氾濫するとそういう低いところから水がつくのです。
その広く水田が広がっていた辺りに国道18号が通り、両側に店や家、学校・工場などができてきます。新幹線が通り、基地もできました。前回書いた松代の高速道路もそうですが、新しい大きな施設を作るためには、広く空いている場所が必要です。ただその地域の災害の歴史を踏まえて、災害に対する特別の対応策を作っておく必要があります。また、それを管理する人たちの危機意識がどれだけあるかも重要です。
台風19号災害で、長野電鉄柳原営業所は急いでバスを高いところへ避難させたそうですが、新幹線基地はとてつもない大きな被害を被りました。どのような対応策があったのかは調べていないので何も言えませんが、被害を少なくする手立てはあったのではないかと思います。
他県の水害のニュースなどを見て気になるのは、老人ホームのような公共の大きな施設が水に埋もれてしまう写真がよくあることです。どうしても新しく大きな施設を限られた予算で作るには、手に入りやすい広い土地があるところが候補に上がると思うのですが、作ることだけではなく、その後の維持管理に災害の可能性を踏まえたものであってほしいなと思います。
また、そういった後背湿地と思われる地域に、道路が通ったからといって住宅団地ができることもよくあります。安くて便利が良いので魅力はありますが、ハザードマップをよく見て購入してほしいものです。