リンダ・グラットン女史の「ワークシフト」を読んでいて、その中身を私なりに理解して、私の経験と結びつけながら発信してきた。最後に来て、私の教員人生の大事な転換点や出会った素敵な子どもたちの姿を思い出すことができた。それは、この本の中に書いてあることが、単なるノウハウではなく、人として目指すべきものを見失わないことや、それによって得る生きる喜びを基本として考えているからだろう。そろそろまとめにしよう。
第三のシフトを一言にまとめると、「消費より経験を重んじる生き方への転換」だ。美味しいもの、高価なものなどを得ることはうれしい。ただ、その喜びは次第に感動の少ないものになりやすい。それに対して、自分が充実し情熱を持てる働き方は、生きる喜びを味わわせてくれる。仲間との心の交流も深まる。
ただ与えられた環境でなんとなく過ごしてもその輝きは得にくい。自分なりに求めたいものを考え、新しい扉を開くことが求められる。それなりに不安やジレンマはあると本には書いてある。
でも私は、紹介した子どもたちの事例のように、最初から不安に立ち向かうような勇気を振るう必要はないと思う。いつもとは違うちょっとした取り組みを振り返り、自分が新しいことをささやかでもできたことを褒めてあげると良いと思う。それを積み重ねていくうちに、その成功体験は2次曲線のように上昇し、苦しくても頑張ることが嬉しくなってくるのだと思う。
もちろん、そのためには、目指すものをしっかり持っていることや自分の欠点も見つめ、乗り越えるべきことを見誤らないことが大事だ。できれば、それを支え合い認めてくれる信頼できる仲間が身近にいてくれることも重要だ。もちろん、自分が望まない選択肢に対してノーと言える姿勢も外せない。
本では、「『普通』でありたいと思うのではなく、ほかの人とは違う一人の個人として自分の生き方に責任をもち自分を確立していく覚悟が必要だ。」とまとめている。自分にとって大切な価値や、追求したい自己像を思い描くのだ。