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働き方の未来と選択 その5

 「バランスの取れた働き方を選ぶ」ということに具体的に触れていこう。「ワークシフト」(リンダ・グラットン著)では、「働き方の未来コンソーシアム」の参加の言葉を引用して説明している。

 一人目のトムは、“バランス”というけれfど、働き方を変えることへの疑問や不安を語っている。

(引用)「私たちはいつも激しい競争に駆り立てられています。この状況を変えるのは簡単ではありません。現場管理職以上に昇進することなく、自社株購入権(ストックオプション)で巨万の富を築くこともなく、良き父親として、あるいは自分の成長を重んじる人物として職業人生を終えた人物が賞賛を浴びることなどあるのでしょうか?」

 確かに、戦後復興、高度成長期を生きた私より上のシニア世代は、難関を超え、バリバリ働くことが当たり前で、深夜まで飲んで駅のベンチでごろ寝などという歌を当たり前に受け入れられる状況を過ごしてきた。しかし、やっただけの成果を認められ、会社が、そして日本社会が成長する喜びを享受してきたもの事実だ。しかし、今は、働いても評価されにくいというか、近隣の国より収入が低いと言われている。そして、上にいるシニア世代が、「定年延長・エイジレス時代」でいつまでもいるので、出世も厳しいのだ。

 仕事の面でも、家庭生活の面でもどうあるべきか決まった答えはない。仕事と私生活とのバランスを取る必要性が叫ばれはじめて数十年になるという。私のいた教員の世界はまだ産休・育休がはっきりしていた点は良いが、女性の管理職が少ないことを思うと、日常の家庭生活はやはりほとんど女性が担い、夜遅くまで男性が職場に残っている状況はあった。

 男女の役割分担の改善や育児のしやすい職業へ転職するといった話は聞くが、そのために失ったものや将来への不安はあるはずだ。