情報の氾濫する社会で、テレビをつければ毎日のように「体をこのように鍛えれば健康を守れます」とか、YouTubeで「あなたの肩こりはこれだけで簡単になくなります」というように、ノウハウを教えてくれるものが溢れている。なるほどとその場で試しにやってみるがなかなか続かない。もしかしたら方法だけ理解して、なぜそうやると良いかを理解していないので、自分の問題点に合っていないのに運動してしまってかえって悪化することもある。大事なことは、どのような情報をもとに未来を見据え、選択肢をしっかり整理して、自分に合ったものを自分が選択することだと思う。
今回のブログで参考にしている「ワークシフト」の著者リンダ・グラットンは、前書きのところで、この「働き方の未来」について書き上げる時、母のパッチワークキルトを思い浮かべたという。自分が長年かけて蓄えたアイデア、他の研究者からの情報、そして世界中の「賢い群衆」に提供してもらえるアイデアなど、たくさんの材料をふるいにかけ、採用するたくさんのアイデアをコツコツとパッチワークのようにあれこれと並べ替え、縫い合わせていったというのだ。パッチワークキルトは決して何となく並べて縫ったものではない。溜め込んだ布の切れ端を丁寧に組み合わせ、一つの意味のある図柄を見出していくのだ。
「未来はこうなるからこれをしなさい」的に、著者個人の考えが唯一の選択肢のように示す本は、ある意味危険性がある。例えば希望の未来を描いて単に元気づけようとするものもあれば、危機感を煽って、がんばらせようとするものもある。
大事なことは、さまざまな情報をもとに、訪れる未来の可能性を探り出し、多くの人の課題や願いをしっかり分析し、向き合うべき選択肢を整理することだ。そして、そこに至った根拠を示し、実際に生きているそれぞれ個人が自分の判断をもとに選択することなのだ。
今回のテーマの「働き方の未来と選択」は、そんな著者(リンダ・グラットン氏)の姿勢をもとに、私から「こうしなさい」という発信ではなく、「あなたならどうしますか」とそれぞれの選択をすすめる語りにしていこうと思う。