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協力して起こすイノベーション その9

 未来に必要となる三種類の人的ネットワーク、3番目は「自己再生のコミュニティ」を築くについてだ。

 「支えと安らぎ」の人間関係をどう構築していくかについて、本では、「住む土地を選ぶ」「仕事を選ぶ」という小項目を立てて説明している。確かにいろいろ工夫する必要があるのはわかるが、その方法論をここで述べてもあまり納得してもらえないだろう。根源的なところを分析してそれぞれ各自で自分の生活を振り返ることができなければ、単なる知識だ。

 友人関係は自然に生まれるものではなく、エネルギーと時間を意識的につぎ込まなければ成り立たない。古代ローマの哲学者であり政治家であったキケロはこう述べている。

「世界で最も強い満足感をもたらす経験とは、地球上のあらゆる題材について、自分自身に向かって語るのと同じくらい自由に話せる相手を持つことである。」

 どんなことでも自分自身に語るのと同じくらい自由に話せる相手をあなたは持っているだろうか。会社や家族など自分の所属する社会で自分の心を押し殺して我慢していることは誰しもあるだろう。その重荷を下ろし語り合える喜びはかけがえないものだろう。最近話題になっている宗教団体の事件は、そこに取り入っている可能性が強い。まずは安心してなんでも話せる信頼関係、安らぎがあり、その関係者から求められれば、自分の財産を与えることはむしろ喜びなのかもしれない。

 今後ますます人と人との接点が少なくなり時間に追い立てられるような社会が来るとすれば、そういった心の不安をどう救っていくか国をあげて取り組まなくてはならない事になりそうだ。政治がそれに蓋をして、自分の都合の良い協力を得る材料にしてはいけない。

 これからやってくるであろう矛盾に満ちた時代をどう乗り越えていくか。もう少し見つめていこう。それが私のブログの大きな研究の場だと思うから。