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連続スペシャリストへの道 その16

 昨日聞いた話だが、妻の親戚関係で、我が家の娘たちとも仲の良い若者が会社を辞めてドイツのポスドク(博士研究員)として旅立つそうだ。ワークシフトの研究をしている私にとっても興味を惹かれる話だ。

 ポストドクター(以下ポスドク)は、日本では、大学の研究員として待遇面や将来性の不安もあり課題の多い職らしい。大学の臨時雇用の立場だったり、時間給だったりという不安や、結果的に准教授、教授などに進めれば良いがなかなかそれも難しいようだ。もちろん自分の好きな研究に打ち込める喜びはあるだろうが。

 今日話題にするK君も、大学卒業時はそんな誘いがあったようだが、企業に就職した。学歴も能力も高いので将来を嘱望されていただろうに、会社を辞めると申し出て驚かれたそうだ。

 自分の世話になった大学の先生から「ドイツで日本の研究者を求めているが行かないか」と声がかかったそうだ。海外では日本と違ってそれなりの待遇は確保されている。ドイツは大学の雇用ではなくて、州政府の雇用で、採用や待遇の書面もしっかりしているようだ。

 このブログはそういった日本の雇用や、研究職の待遇を話題にする場ではないので、あまり深入りはしたくないが、「優秀な人材の流出」とか、「日本の優秀だけれど安い労働力」などという言葉がニュースから流れてくると、我が国の未来を案じてしまう。

 K君はとりあえず3年の予定でドイツに行くが、その経験の中で自分の求めていた研究に取り組め、力を認められることを願いたい。3年の予定ということだが、専門性を高め、発展的な立場で向こうで研究を続けられたり、日本に帰るとすれば、大学や企業の求める人材として確かな職に就けることを願いたい。

 「ワークシフト」では、オー・デスクという人材紹介の企業を例に挙げ、専門技能の売り手と買い手の間をとりもつシステムを紹介している。専門技能・知識、質の高い仕事能力が評価され、格付けされる未来が来るのだ。フリーランスが、評価の高い仕事をすれば、自分のブランドを確立でき、収入も豊かにできるのだ。いかに時代のニーズに対応した存在となれるか、それを差別化し自分のブランド化できるか、そしてそれをうまく発信できるかなど、自分の存在の刻印が求められているのだ。K君が、会社の一員として過ごした時間以上に、自分らしさを求め続けられる未来を願いたい。