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連続スペシャリストへの道 その14

 専門技能・知識を更新し続けるスペシャリストとして社会に認められるために三つの提案を昨日あげた。その一つ目は、「自分の刻印と署名を確立する」だ。

 「ワークシフト」の中では、まず家具を紹介している。年季の入った樫材から職人が手作業で作った美しい家具に、小さなネズミが彫られている。それをよくみると、どの職人の作品かもわかるというのだ。有名な工房で作られた証なのだ。

 そういう伝統の工芸品と全く次元の違うOS(オペレーティングシステム)の開発の例も載っている。リナックスのソフトウェアは、プログラマーたちがボランティアで開発に関わり、無償で配布している。膨大な労力を必要とする開発を大勢のプログラマーが参加し、オープンな場(「バザール」呼んでいる)で進めているのだ。大勢の目に触れるので、重大な不具合が取り除かれやすいという。ただ、参加した一人ひとりの取り組みが大勢の中に埋もれてしまい、貢献を認められたり、賞賛されたりする機会が得られないのだ。なので、プログラマーたちは、他の人たちの貢献に敬意を払い、とりわけ重要な成果をあげた人の名前をソフトウェアに明記することにしているという。

 小説家や作曲家など、評価が高い作品を出せば、まさに多くの人に認められ、次の作品も期待してもらえる。さまざまな職種でもそのように個人の専門性の高さが差別化されることが大切なのだ。

 そういえば最近読んだ原田マハの「風のマジム」は、ある企業の契約社員だった若い女性が、沖縄のサトウキビを使って国産のラム酒を作るという思いつきを、社内ベンチャーコンクールに提案し、その夢を果たす物語だった。その子の名前は、伊波まじむ。そしてできたラム酒の名前は「風のマジム」。“まじむ”は、沖縄言葉で「真心」のことだという。まさに今日のテーマの「自分の刻印を確立する」だな。