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連続スペシャリストへの道 その11

 最近のブログ(その7)で紹介したが、指導補助をしていた中学校の合唱部が地区大会で金賞を取り、来週の県大会に進む。とりあえずホッとしている。実は、本番の前日の夜、夜中にふと目が覚めて、コンクールのことを考えているうちに眠れなくなった。声作りや曲の解釈などはかなり手を入れたが、あとは本番で指揮がその力をうまく引き出してくれるといいなと思った。しかし、先生の指揮の何をどう気をつければ、変化に富み、テンポの扱いの自由度が面白いあの曲の良さを表現できるのだろうと考えているうちにますます眠れなくなった。

 そのうちに、私も男子と一緒に先生の指揮を見て歌った時、自分がうまく合わせられなかったことを思い出した。なぜだろうと考えているうちにふと思い出した。小節をまたがるタイ(音を一つにつなげる記号)がついたリズムの分かりにくいところや、各パートのリズムが交互にずれるところで、うまく合わせられなかったのだ。その時は、私が「もっと6拍子の1っ拍めをはっきりさせて」と言ったら、「そこはタイで同じ音なんです」とか言われ、「ああ、そうなんだ」と特に考えずにやり過ごしてしまった。

 音楽には「拍」と、それが幾つかずつまとまった「拍節」そして、その中でつながったり刻まれたりする「リズム」があり、それをきちんと理解して処理しないといけない。ピアノの専門家なので、全て本人の中にはきちんと刻まれ、まとまり、流れているが、生徒にただ楽譜のリズムだけを細かく振っても、パートごとにリズムの違う曲ではとてもその指示を理解できない。大事なのは、6拍子の拍節のまとまりをわかりやすく示した上で、その変化や分割・強調するリズムなどを指示することなのだ。5拍目や、6拍目をいきなり打ち込まれてもダメなのだ。1拍目や4拍目の強拍を指示することが重要なのだ。

 どうやって伝えようか迷った。まさか夜中に電話するわけにはいかないし、ホールまで行って、空いている時間に実技指導しようかとも思ったが、どれも焦らせるだけでかえって迷惑だ。朝、起きた頃を見計らってLINEで、伝えたいことがあるからビデオ通話をもらえるかと伝えた。

 6時半ごろ電話がかかってきて、「先生、私も寝られなかったんです。」とまず言われた。それから、私が実際に指揮をやって見せながら、ポイントを指導した。その後、先生は係の仕事で、ホールへ行き、私が中学生の指導に入り生徒にも拍節とリズムを説明し、みんなで拍子感覚を大事にして歌うように指導した。

 今年のNHKコンクールの課題曲は「Replay リプレイ」。出だしの歌詞は、「♪リプレイ、巻き戻せない、同じ朝は二度とないよ……」だ。まさに、この歌の通りの朝を過ごしてしまった気分だった。「まあいいか」「仕方ないね」ではない生き方の好きな先生なので、そんな驚いた電話も一生懸命受け止めてくれて、結果が出せたのだ。

 今週、指揮だけを研究しに我が家に来るそうだ。生徒のいないところで二人でじっくりと曲の解釈と指揮でどうそれを表現するか考える。まさにそんなことの積み重ねが「連続スペシャリストの道」なのだと思う。