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連続スペシャリストへの道 その6

 専門技能を磨くことに触れる中で、昨日は中世の職人の世界を思い起こすような「状況に埋め込まれた学習」のことを通して考えた。先輩から技を学び、20年ぐらいもの長い時間をかけて自分のものにしていく技能だ。しかし変化の激しい未来を考えた時、その技能をどう更新していくかという独創的なイノベーションが求められてくる。

 そこで「「ワークシフト」の本で取り上げているのが「子どものように遊ぶ」という項だ。これまで企業は、合理性・一貫性を確保するため「管理」を重んじてきた。仕事が細分化されて、自分が生み出す商品と切り離されて、ある部品だけを単調にかつミスのないように作る作業を受け持ってきた。労働の価値観や喜びから切り離された環境と言っても良いだろう。しかし、そういういわゆる「作業」はロボットが受け持っていく時代になってきている。機械ではできない微妙な加減の必要な仕事でベテランの人の存在が大事だと紹介される番組はたまにあるが、まさにこれからの時代そんな専門技能が求められていくだろう。または、大量生産ではなく、欲しい人のニーズに応えるような個性のある品物が求められるだろう。

 そんな独創性とイノベーションを願う時、「遊びと創造性」が求められるというのだ。仕事が遊びになるのは、普通はやらないことをする場合とか、社会生活の普通のパターンをひっくり返す場合だ。

 そのことは、我が娘が練り切りの体験工房を始めた理由と通じる。余暇を利用して趣味の講座を楽しんでいく中で、自分が「無になれる瞬間」を味わったと言っていた。それをいろんな人に紹介したくて始めたのだ。自分が作業員となってお菓子屋に勤めることもできたろうが、そうではなくて、季節に合った練り切り作品を創造し、それを実際に作ってもらうという仕事を始めたのだ。哲学者サルトルは、「仕事とは意義を見出すプロセスである」と位置付けたそうだが、本当の自分らしさと個性を獲得することが重要なのだ。