「連続スペシャリストへの道」の話題を続けよう。「連続」つまり、より本物で時代に即したイノベーションを求める取り組みを続けるにはどうしたらよいか。「ワークシフト」の本の中では、三つ挙げている。
第一は、「場所」の問題。学ぶべき点のある人たちのそばに身を置くことだ。第二は、「時間」。高度な専門技能を身につけるには、やはりかなりの時間を注ぎ込む必要がる。私は以前プロの道は2万時間とブログに書いたが、単に時間の長短ではなくそれにどう向かうかという姿勢があってこその時間だが。そして第三は、「差別化」自分の技能を他の人たちといかに特色あるものにできるか、そしてそれを宣伝できるかが重要ということだ。
この本の説明を読んで、教育研究でよく指導をいただいた佐伯胖先生の訳した「状況に埋め込まれた学習」(産業図書刊)を思い出した。その一節を紹介する。(P190より)
[以下、本文のまま]
LPP(正統的周辺参加)では、学習をコントロールするのは実践へのアクセスであるとする。つまり、教材や教師の役割がそこにあるとすれば、学習者をいかにホンモノの、円熟した実践の本場(アリーナ)を当初からかいま見させて、そこへ「行ける」実感を持たせ、また、たとえごくごく周辺的であっても、そこへつながっているということがなんとなくわかるような、実践の手立てを講じてあげる、ということになる。教師がやらせるから学ぶのではない。教師がホンモノの世界(円熟した実践の場)をかいま見させ、そこへの参加の軌道を構造化する一方、子どもはその世界との斬新的交流で、自ら学んでいくときの「共同参加者」となる、ということになろう。[以上]
学校や訓練校で職業に触れたり、基本を学ぶことはよくある。ただ、昔の徒弟制のように、親方や先輩の下働きをしながら、なんとかその技を掴み取ろうとする欲というか熱心さがその生徒たちにはあるだろうか。教師がルールに従って教えるだけでなく、いかに本物に出会わせ、自分をそんな技能を持てる人間にしたいという思いを育てられるか。さらに、それが別な世界ではなく、自分とつながっていて、いつかは自分もと思えるようになれるかが大事なのだ。
未来をよく見据え、自分の専門技能の今後のあり方を探るには、そういうイノベーションの展開を肌に感じるような環境を身近に作ることが必要だ。そして時間をかけてそれに取り組むには、それが他人事ではなく自分と繋がっていると思えることが前提だ。最後に、学んだこと、自分の価値をいかに発信していけるかも大事な技なのだ。