土曜日に教えた中学生たちが、「発声やりたいです」と申し出ていると顧問の先生から連絡があった。太くて響きのある声を出したいそうだ。今週ももう一度行って、前回不十分だった男子の声作りをしたい。
これからの時代、「広く、浅く」ではなくて、専門技能(知識)の連続的な構築が重要だと、ワークシフト著者のリンダ・グラットン氏は書いている。グローバルで多様な情報が溢れる時代は、簡単にさまざまな知識や技能が手に入る。いわゆるゼネラリストに頼らなくても、個人の取り組みでレベルアップしていけるのだ。安倍総理を撃った銃もYouTubeを参考にしたというから怖い世界だ。
連続スペシャリストになるために、自分の選んだ(できれば好きな)分野で高度な専門知識や技能を磨くことに取り組みなさい。そして、それをいかに相手に納得させられるか(セルフマーケティング)という力などが重要なのだという。
また、その専門的な知識・技能もどんどんと変化していくイノベーションの時代だ。一つのことにしがみついているだけではなくて、他の分野に移動したり、脱皮したりを繰り返さなくてはいけないとも書かれている。
今回の中学生の部活動指導で配慮したのは、単に私の知識や技能を伝達するのでは不十分だと思った。随分前から私の指導を慕ってくれ、この辺りではトップクラスのピアニストとして能力の高い顧問の先生の音楽性を中学生の演奏に活かしてあげたいと思った。また、前顧問がとても練習に厳しい人だったようで、部員や保護者から「今年はほどほどでいいです」と言われてしまう状況の中で、どうしたらいい意味での本気モードに向かわせることができるかということも重要な課題だと思った。
初めて出会った子たちを瞬時に理解して、最も相応しい指導など簡単にできるものではない。そこで、顧問とは電話でいろいろ練習の様子を聞いた。もちろん自分も曲を歌ってみて、子どもたちが乗り越えることの難しい演奏ポイントはどの辺か研究もした。そして、最後は「指導ではなくて、音取りが難しいので最初は私も応援部員として一緒に練習させてもらいます。」と連絡した。生徒たちの中に入って一緒に歌うことで、次第に心を繋ぎ、問題点に気づく中で、どうしたいいか作戦を考えたかったのだ。隣で歌っていた男子は中学生をは思えない立派な響きの声だった。男子が帰っていなくなった後半は、声にエネルギーのない女子を中心に体をフルに使った声の出し方を指導して、とても鳴りが良くなって別な合唱団のようにレベルアップして、私としても結構欲が出てきた。
教師や看護師などは、「マイナーな専門家」という。医師や法律家は自分の考えが主で、相手にそれに沿った対応を求める「メジャーな専門家」だ。マイナーな専門家は、理論や方法は自分なりに持っているが、相手に合わせて変化させて対応していく。これはある意味とても高度な専門性と知識・技能が必要なのだ。