「ライフシフト」(東洋経済新報社刊)のまとめとなった。昨日はマルチステージという言葉を聞くと思い浮かんでしまう原田マハさんのことを書いた。もう一人、想定していなかった厳しい人生ステージを乗り切った女性を紹介し、テーマの「自分の希望とニーズを明らかに」の意味を考えたい。
宮崎知子さんというNHKの“逆転人生”を見て感動した人だ。「借金10億円の旅館を甦らせた素人女将の奮闘」と言えば知っている人も多そうだ。まずその宮崎知子さんを簡単に紹介しよう。(参考:東洋経済オンライン)
大手メーカーのエンジニアと幸せな結婚をし、二人目の子どもがお腹にいた知子さん。夫は老舗旅館の長男だった。義理の母が知子さんの見舞いに訪れ、亡き夫から旅館を引き継いだが、経営がうまくいかず借金があると聞かされた。なんと10億円。夫は旅館を継がないはずだった。しかし、夫は連帯保証人になっているという。あるホテルチェーンが買取りに名乗りをあげたが、なんと1万円。お年玉程度の価値しかないのかと思ったという。夫婦で旅館を引き継ぎ、戦う道を選んだ。
まず、この有名な老舗旅館の課題を探した。20しかない客室に対し120人以上の従業員がいて、分担した仕事以外はやらない。しかも二つの派閥で争いもあり、その改革から始めた。借金だらけでいつ潰れるか分からない旅館と知って大勢が辞めていった。20〜30人となったスタッフで仕事の改革。例えばタブレットで情報の共有、従業員が必要な仕事を複数こなせるようにするなど、システムの改革をした。
問題は自身の家事・育児。最初の3年間、知子さんは1日の休みも取らず、借金と闘う日々。寂しい子どもたちを思いつつも辛かったろう。3年経ち、自分の精神も限界に近づいていると感じた知子さんは、なんと週休3日制を提案。もちろん、従業員も銀行も反対。ところが結果として利益が上がったそうだ。経費の削減、従業員の働き方改革、それがサービスの向上につながり、旅館の評価向上へとつながったらしい。そして何より自分も子どもたちと過ごす時間が増えた。
ここから学びたいのは、「変革」はどれだけ現状を知り、過去の方法の中にその原因を探ることや、時代の変化をどう経営に活かしていくかなど、視野の広さや確さが大事なことだと思う。さらに、ダメなことを無理してやるよりも、状況に合わせて、互いが喜ぶ道を探すことも大事だ。「希望とニーズ」をそこに感じるのは私だけではないだろう。
人生100年時代。退職後のお金はいくら必要だとか、孤独な老後、老老介護など、気持ちが湿る話題が多い。だからこそ、「希望とニーズ」を捨てず取り組み続けていきたいものだ。
人生戦略を見つめてきたこのブログも一旦締めくくる。しばらく、これまでのブログの整理と、新しい視点の検討をさせてもらおう。今考えているのは、リンダ・グラットン著の「ワークシフト」(プレジデント社刊)を読んでみようかなと思っている。1週間ばかり休むと思いますが、乞うご期待。