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自分の希望とニーズを明らかに その1

 「ライフシフト」(東洋経済新報社刊)のまとめを本の抜粋で終わらせるのは残念なので、このブログを書きながら、「すごいな」と思った人を紹介してまとめよう。

 まず原田マハさんは、このブログで何度も取り上げてきた。「キネマの神様」は、私のようなシニア世代が自分と向き合うことの素晴らしさを教えてくれた。映画も見にいったが、小説の方がずっと良い。「旅屋おかえり」「常設展示室」他、たくさん読んで、今はようやく「楽園のカンヴァス」に辿り着いた。いつも思うのは、自分のアイデンティティを見つめることの大切さだ。この人の本を読んでいると、「面白い」などという感想のレベルではなく、「今こうしてゆっくりと椅子に座り、小説と向き合える時間の幸せ」を与えられた自分の人生に感謝したくなるのだ。

 この原田マハさんの人生はまさにマルチステージの人生だ。大学を卒業して「モラトリアムな時期」があったと言っている。自分のやりたいことを探すエクスプローラーだったのだろう。小説を読み漁り、漫画を描いて応募したり…。「漫画は下手だけどストーリーは素晴らしい」との講評だったというから小説家の片鱗はもうあったのだろう。

 関学を出てからグラフィックデザイナーになったが、アートの世界に行きたい思いがあり、激務に体調を崩して、1年半ほどで辞めてフリーになった。そして、原宿でぶらぶらしていたら、マリムラ美術館が近日オープンの準備をしていて、なんと、「私を雇ってください」といきなり入って行ってお願いしたそうだ。そこからの人生は興味のある人はぜひ調べて欲しい。本当にすごいなあと思う。

 ここからは簡単に触れる。思いを受け止めて採用してくれた美術館をやめてアートマネージメントのNPO法人へ。次にそこに見学に来た伊藤忠商事の社員にまたお願いして、プレゼンを間に合わせ採用。5年ほど勤めたが、伊藤忠の顧客だった森社長に新しく作る美術館の手伝いを頼まれ、結局森美術館へ。ともかく本人も言っているが「当たって砕けろ」式の人生の扉の開け方がすごい。そして、それは「自分が本当にやりたいこと」を探す旅だったのだろう。

 今は小説家として素晴らしい生き方を多くの人に味わわせてくれている。ただ、これからも新しいことへの挑戦の目は持っていそうだ。まさに「マルチステージ」進行中の先達だ。ファンはたくさんいるので、原田マハさんが紹介してくれたE.Hゴンブリッチの「美術の物語」は、すぐ注文したがいまだに届かない。今日のブログはこのくらいにして、原田マハさんが若い時ハマったという「三国志」を読もう。