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教育機関の課題

 日本の教育機関の課題については、「今後はマルチステージの人生のニーズに応え、成長著しいM O O Cs(ムークス)との競争に負けないために、絶えず対応に追われることになりそうだ」とライフシフトはまとめている。つまり、「現状では厳しく、日本は大変なことになるよ」と言っているということだ。

 教育の現場は、これまで積み上げてきた成果を次の世代に伝えることが基本なので、「将来こうなるかもしれないから、もっとこんな実験的な教育を試してみよう」とはなりにくい。特に日本は、高等教育で何を学んだかより、どこの大学を出たかとか、得意なことは何かなどと経歴や人間性などを重視し、企業は人材をとる。時代の変化が激しくなるというのに、それに対応するのはとても難しい。

 大学の入学者の年齢別割合を見ると、OECD各国の平均は、成人学生(25歳以上)の割合が平均で21%もある。(2008年のデータ)それに対して、日本はなんと2%ばかりと超低い。文科省でもそれを課題として意識しているので、よくなってきているかと調べてみた。2016年のデータでは、約61万人の入学者のうち、25歳以上は約5000人。1%に満たないのだ。社会人になって、さらにスキルアップするために学び直す成人学生は本当に少ないのだ。年齢の均質性がとても高く、世代別の固定観念や偏見が形成されてしまう。

 教育産業でも、イノベーションは検討されている。MOOCs(ムークス)は、インターネットを通じて無料で世界各国の有名大学の授業を受けることができる新たな学習環境だ。原則無料で、ネット環境さえあれば、世界どこでも視聴できる。その有名な一つCoursera(コーセラ)は、スタンフォード大学の教授によって設立された講座だ。2019年9月現在で、世界の196の大学・企業と連携して3,751の講座と16の学位を提供しているそうだ。

 これは、上の段落で扱った成人たちのキャリアアップに恩恵を与えている。登録している人の83%は大学あるいは大学院卒で、年齢の中央値は41歳だという。昨日話題にした「成長思考」を持った者たちが、専門分野の学術的知識を学び直すのに理想的な場となっている。