ライフシフト終章「変革の時代」は、362ページ「習熟」の項へ進む。私は「習熟」という言葉はいかにも訓練的なのであまり使わない。一流のプロは、一万時間を超える真剣な取り組みをしているという話を講演会でしたことがある。それを実践するには、それなりの覚悟がいる。やらされた一万時間と自らの意気込みで取り組む一万時間は全然価値が違う。昨日の教育の話で、一つの答えを教えるのではなく、考える過程、結果を出す面白さ、自分の高まりの実感や喜び、それらのことに気づかせるのが本当の教師だと思う。あとはその子が自分の力で高まっていくのだから。
一流のプロを目指す上で、そのように真剣に取り組む鍵を握るのは、「自己効力感」と「自己主体感」だと本の中では言っている。読んで字の通り、自分はできる、自分でやるという思いがあることだ。まわりの大人が「褒めてつけた力」は、一回の挫折で崩れ去る。「自分の高まりの実感(本当の自信)」は、次へのエネルギーとなる。厳しい状況や挫折を乗り越えるベースになる。それは、初めはちょっとした小さな一歩でも、それを繰り返すうちに、二次曲線のように成長の度合いがアップしていく。
未来の自己像が多様になると紹介したが、それを選択するのは自己認識だ。今朝見たドキュメンタリー番組で、最近ブームになっている「フリーランス」のことを扱っていた。確かに誰しも「自由な時間」「自分で選択する自由」が欲しい。しかし、会社勤めを嫌って、自分の生活を楽にしたいと思う選択は危険だ。初めは良かったけれど、契約変更を迫られ、勤めていた頃より厳しく働かないと収入を取れない例を扱っていた。自分の長所というか才能、経験を活かし、起業するなどして、貴重な存在として色々なところから仕事を頼まれる存在になることは、それなりの意志と能力を強化しなくてはいけない。
本の中では、「なんらかのスキルを習得しようと思えば、長期の恩恵(例えば、イタリア語を話せるようになること)のために、目先の快楽(例えば、お気に入りの連続ドラマを見ること)を我慢しなくてはならないことが多いのだ。そういった自己更新の力は、後天的に身につけられるという。上に書いたように、褒められて掴んだ自信ではなく、自分で達成してきた自信から育まれるのだ。
ドゥエックの言う「成長思考」の持ち主は、快適なぬるま湯の外に出て行き、未来につながる道に思考を集中することにより、将来の計画を貫くことができると本で紹介している。「フリーランス」の事例のように、ものごとの美味しい部分だけを見てはいけない。今厳しい選択(決断)ができるかというセルフコントロール(自己抑制)を忘れてはいけない。