「ライフシフト 100年時代の人生戦略」も最終章に入る。100年という切れ目が重いので世の中で大きな話題になっているが、40とか50年だった平均寿命が今は80歳を超えているのにこれまではあまり騒がれなかった。教育、就職、余生と3ステージの一斉更新だった時代は、与えられた環境で一生懸命生きることが重要だったし、退職後は世の中のご恩に感謝する気持ちで、「長生きしていいね」ぐらいだった。だが、これからは子育てや仕事に追われる以外の時間をいかに意味あるものとして過ごすことができるか問われるのだ。
今までとは違う意味で「選択」と向き合わなければならないのだ。コヴィーの「命の次に大切なのは選択の自由があること」という言葉をよく紹介してきた。「自由」という言葉はよく使われるが、どれほど考えてそれを使っているだろうか。
そんなことを考えていたら、今ニュースで「コロナ給付金4630万円を誤送金」という信じられない事件が報道されていた。受け取った男性は返金せず連絡が取れない状況のようだ。人が生きていく上で「自由」は大切だが、なんでも本人が決めて良いわけではない。お金には換算できない大切な資産を失ってしまうことを知らないのだ。
長寿化が話題になる中で、長野県はトップクラスの長寿県だ。その背景や健康長寿がさらに求められていることなどを公民館講座などでよく扱った。その時、東北のある平均寿命の短い県のことも紹介した。その県で、「そんなに歳とってから長生きしてもしょうがねえ」という言葉を言っている人がいるそうだ。しかしデータをよく調べると、長生きの人が特に少ないわけではなく、50歳代や60歳代の世代の早めの死が多いことがその県では見られる。そこのところをわかっていないのだろうなと思う。
100年時代の人生戦略で大事なことは、時代の変容やその背景をよく知ること。その上に立って、自分らしさや自分の未来の生き方をよく検討し「選択」することなのだ。選択の自由の幅が広がっているので、「なんとなく」ではなく、「よし、これで行こう」と推しのパワーが必要なのだ。