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女性と仕事

 子育てについて考えてきた。人生100年時代、青年期から成人期への移行の若者が自分の仕事を選び、キャリアを積もうとしている年頃に女性は、結婚・出産・育児という大きな選択肢を乗り越えていかなくてはいけない。もちろんそれは苦しみではなくて大きな喜びであることは間違いないが、パートナーとの理解・協力あってのことだ。さまざまな工夫、身内や関係機関の支えも大事だ。

 パートナーと家庭を守っていく上で見過ごせない課題は男女の賃金格差だ。ライフシフトの資料によると、フルタイムで働く女性(25歳〜65歳)の平均年間所得の対男性比は、1980年は0.56、2010年は0.72、2014年は0.77と上昇してきた。だいぶ改善はしてきているがまだ差が大きい。教員の世界は給料表が同じで男女の差はない。しかし、役職の差は明らかで、そこで所得の差があることは事実だ。

 2013年のアメリカの調査で、男性は女性に対して、金銭的報酬をともなう仕事に費やす時間が週に11時間、娯楽に費やす時間が週に4.5時間多かったという。その差約15時間が、家事・育児に女性の方が多く負担しているということだ。教員の世界でいうと、校内の責任あるポストや研究など、若い時代にキャリアを磨くチャンスを女性は引き受けにくいということだ。私がいた県内でも有名な研究校は、男性は家庭持ち、女性はほとんど未婚者だった。

 国際労働機関(ILO)が2015年に発表した報告書「女性と仕事の未来」によれば、現在のペースでいくと、男女の賃金格差が完全になくなるまでには、少なくとも70年かかるという。