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パートナーとの親密さの変容

 家族や夫婦に関する社会規範の変容だけではなく、さまざまな社会の変容が夫婦の性的役割分担の弱体化に影響している。例えば、掃除機や洗濯機などの家庭電化、調理済み食品の普及などで、家事に慣れた女性が専念しなくても良い環境が整ってきている。このコロナ禍でテイクアウト食品や、一流の食堂で食べるような冷凍食品の本格化など目を見張るものがある。

 さらに女性の所得や役職等の待遇改善も急速に進んでいる。そのように夫婦間で役割分担の仕方が以前ほど重要でなくなってくる中で、それに代わって重要性が増しているのは、「親密さの変容」だという。互いに取引的性格を持つ旧来の夫婦関係とは異なり、その関係自体が双方に恩恵をもたらすからこそ維持されるというのだ。夫は勤め、妻が家庭を守るといった“生産の補完性”だけでなく、互いがいるから自分の願うことの実現に支えになったり、生きがいを理解し合ったりという関係になるということだ。

 ただ、それには、相手に求めるだけではなく、自身を見つめ(内省)、相手の気持ちを理解し、双方で再検討と再構築を受け入れる関係であることが大事だ。互いの立場・役割が固定化した不変の関係であったり、惰性で継続されるようなものではなく、二人で調整を重ねていく関係だ。

 これから成人期を迎えるジェーンのような若者たちが「パートナーを持つかどうか」「持つとしてどんな人物をパートナーとして選ぶか」ということ、つまりその再検討・再構築を受け入れる関係となれる相手なのかが重要なのだ。

 今このプログを読んでいる大部分の中年期・老年期の人はそんなことはあり得ないと思うことだろう。確かに日本の社会の変容は上の世代は実感できないことが多い。先日たまたま見たテレビ番組で、「育休改正」について扱っていた。少子化の懸念、世代間のアンバランスなど、国の将来に対する不安から、結婚を奨め、法律で子どもを産みやすい環境を整えるため取り組んでいる。今回の法律改正で、日本の育休制度の内容は、OECD各国の中ではトップクラスだそうだ。しかし、日本の男性はほとんど育休を取らない。ヨーロッパでは、80%もの男性がとる国もあるそうだ。今回の法律改正で、雇っている会社に育休取得を薦めることを義務化したそうだ。若い世代にとってパートナーとの親密さの本当の意味、それを支える企業等の役割、人生の先輩である両親・祖父母の発想の転換など、社会の意識を人生100年時代に対応できるよう変えていかなくてはならないだろう。