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家族観、夫婦観の変容

 ジャックのような現在後期高齢者と呼ばれるような世代は高度成長期の中、家庭と仕事の境界が明確で、妻は育児や地域との関わりと担当し家庭を守った。もちろん多くの妻は、パートや内職などで家計を支えた。夫の家計に対する身勝手さがあっても、家を守ることが当たり前の時代で、夫婦関係が希薄になっても我慢した。育児が終了した後も仕事を続け、夫との共同生活は続けるものの、夫婦愛は冷めていても社会的な関係を壊そうとはしない。

 今中年期となるジミーの世代は、家族と夫婦に関する社会規範が大きく変わり、日々の私生活と社交関係のあり方も根本から変わった。ライフシフトでは、シェア・ハイトの著書「女性と愛」が出版され女性の役割に関する大論争が持ち上がったと紹介されている。

 詳しいことはその本を読んでいないので紹介できないが、こんな内容のようだ。

 1976年に発行された「女性の性に関するハイト報告書」は、著者シェア・ハイト博士(女性)が、全米10万人の14歳から78歳までの女性に質問書を配付し3000人余りから寄せられた回答をもとに分析した結果だという。20世紀前半までは、アメリカ人は福音主義キリスト教の影響下で性に対して保守的で、特に女性が性について語ったり、積極的になることはタブー視されていた。多くの女性が性は隠すべきもの、性行為は恥ずかしいこと、性器は汚いものという意識を持っていた。結婚における性生活では、夫を満足させて子を産むのが妻の役割であったという。

 その後、キンゼー報告やハイト報告によって、性の実態が女性自身の言葉で明らかになり、社会の改革につながったとされている。そして、色々な角度から男女の関係や意識の違いなど、関係した本も出され、世界中でそういったことがオープンになっていった。

 男性が女性に対して性行為だけを求めて、女性が会話を求めると拒否するとか、夫婦でも妻は性行為に喜びを感じていないのに一方的に夫から求められて苦しんでいるといった男女の意識の差。セックスレスや自慰行為など今は当たり前に語られるようなことが性革命と言われるほど急激に話題にされるようになった。以前は夫婦二人だけの問題、いや妻の我慢するべき問題とされていたことが解放されていったのだ。

 そんな時代に働き、家庭を作り、育児をし、将来をどう築いていくのか、それが1970年代に生まれ、1990年代に高度成長期から不況の時代変化を体験し、愛し合って結婚したはずなのに、その理解し合う関係を維持することの難しさに悩む、45歳から50歳ぐらいのジミー世代なのだ。