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少ない投資で素早いチャレンジ

 インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)について語ろうとするとすぐ我が家の次女のことを思い浮かべてしまう。大学を卒業して東証一部上場企業に就職し、かなり良い成績を上げていたが、3年目の途中で退職し起業した。まさにインディペンデント・プロデューサーなのだ。北鎌倉の観光客で賑わう地に古民家を借り、練り切りを教える仕事を始めた。これについては、後日整理して紹介したい。

 この娘に去年の暮れ、起業祝いを持って訪ねた。その時のことを行きつけの飲み屋さんで話したら、「なんでもっとたくさん持っていかないの」とおかみさんから叱られた。10万や20万でなく100万とか200万持っていけというのだ。

 この飲み屋さんとは、私が大学時代からだから50年近い付き合いになる。夫婦でやっているこじんまりしていて、落ち着きのある店だ。普通の居酒屋さんでは味わえない季節のものや手の込んだ料理でゆっくり晩酌気分を味わえる。おかみさんと話が盛り上がり、一人で行っても楽しく過ごせる。カウンターで他にお客さんがいても、いつの間にかおかみさんを交えて仲良く会話している。

 この店を開いた時は、旦那さんが会社を辞めて二人で結構苦労したようだ。資金もだいぶ必要だったようだし、儲けを出せるようになるのは簡単ではなかっただろう。返せない借金を背負うような失敗は許されないのだ。

 我が娘の話になった時、そんな開業した頃の話を始めて聞いた気がする。今は、お子さんたちも独立し、二人でのんびり儲けを気にせず趣味のようにやっている感じなので気楽に付き合えたが、スタートした頃は大変だったのだ。それが、先ほどの「なんでもっと資金を出してあげないか」ということになったのだろう。

 近頃は、主婦で子育てしながら自分の趣味を活かして手作りのものを販売したり、フリマビジネス、ユーチューバーなど、自分の工夫やネット活用で儲けをとっている人が多い。自宅で資本はほとんどかけない。アイディアや自分の特技を活かす面が多い。試行錯誤を繰り返し、思いついたことを実験的に取り組んでいる。そのスキルを確かなものにしていくこと、つまり無形資産を増やしていくことが、結果として有形資産に繋がっていくのだ。

 我が娘もまだまだお金を稼ぐ点では勤めていた頃の方が上だろう。しかし、インスタグラムで日々色々な人と出会って一緒に体験したことを上げてくれていて、その人たちの笑顔を見るのはこちらまで癒されるものだ。