自分と社会を見つめる科学 その42

 昨日は、OECD各国の中で、日本が大学で学ぶ25歳以上の成人期の人の割合がとても低いことを書いた。今、「人生100年時代」とあちこちで話題になったり、エイジレス社会・生涯現役など、人生の在り方が問われる時代となっている。青年期に自分とは何か、自分の将来を見つめる年頃であるには違いないが、成人期になってからも、常に自分の「アイデンティティー」を問い続けることになるだろう。

 これまでは、学業に専念する約20年、勤労の約40年、退職して余生の約20年と、人生約80年を皆が一斉行進をしてきたが、大きく変革していくことだろう。結婚式の新郎新婦の紹介で、どんな家に生まれ、どこの大学を出て、どんな会社に入ってと、その経歴が語られる。人が、どのような学歴でどのような会社にいるかというようなことが、アイデンティティーとして「あの人は◯◯な人」と語られることが多かったが、これからは、組織を離れて、どんなことに興味を持って、どんなことに能力が高くて、何を目指してなどと、その人自身の無形資産でアイデンティティーがとらえられることが多くなってくるだろう。他人事ではなく、我が家の娘も先月会社を辞め起業した。東証一部上場企業でかなり良い営業成績を上げていたのに、自分のさらに納得できる働き方を求めているようだ。

 私は「人生は自分発見の旅」という言葉が好きで、講演会などでよく使うが、自分のアイデンティティーは、どこかにあってそれを見つけるのではなく、可能性にチャレンジして変身していくものなのかもしれない。そして、「ああ、自分もよく頑張っているな」と褒めてあげたくなる時、さらに新しい世界を求めたくなるのだろう。日本の社会がそんな成人期のやる気ある大人たちに学びの機会を与え、学んだ人たちの成果をきちんと待遇として評価してくれる社会になることを願っている。(続く)