「サクセスフルな100歳に向けた提言」(参考:植木理恵著「しあわせな老いを迎える心理学」第3章)に入りました。最初の項は「道徳心がもたらす人生の幸福感」です。
道徳は私も教育に関わる中で大事にしてきたものです。いわゆる徳目「〇〇は大事なことなので守りましょう」的なことではなく、人生の主人公として、自分と向き合い、まわりの人と向き合い、社会と向き合うことの意味を考えさせました。人生において立ちはだかる問題に答えは一つではありません。あいさつは大事だとわかっていてもそれがどうしてもできない時もあります。頑張ることが大切だとわかっていても、愛する人に「頑張って」と言えない時があります。自分を見つめる気持ち、相手を心底理解したいという愛、社会の目指すものを高い視野から知りたいという熱い思い、そんな純粋な主人公としての思いを考えさせる場なのです。道徳を学校で大事に指導しないさいという政治家が本当に道徳の必要性のなんたるかを知っているのかと思います。
著者の植木さんは、「何の見返りも期待しない『徳を積む』という高度な幸福感」をまず掲げています。子どもだった頃、「暗くなってきたから早く帰りな」などと声をかけてくれたおせっかいなおじさん・おばさんの例をあげ、「おせっかい」「世話焼き」な行為の大切さを大事にしたいとしています。そういうタイプの人の方が、いきいきと明るく、世間とのコミュニケーションも活発で、その結果メンタルヘルスも極めて良好だと言います。
孤独な老後ほど寂しいものはないように思います。去年大岡公民館で歌と健康セミナーをした時、2回目からきてくれたおばあちゃんがいました。家が近くて仲良くしているおばさんが1回目に参加して、「楽しいし歌っている歌もなつかしい歌であれなら大丈夫」と言って誘われたそうです。2回目、3回目と喜んで参加してくれて、3回目には、自分でついたお餅を持ってきてくれて私にくれました。家で食べたら市販のものよりずっと美味しかったです。そのおばあちゃんは、ニコニコしていてすぐお礼に自前のものをくれたりするのでご近所でも愛されているようです。幸せな老後というのはこんな笑顔なんだなと今でも思い返します。(続く)