自分と社会を見つめる科学 その31

 サクセスフルエイジング(幸せな老いを迎える)心理学について、心理学者植木理恵さんの著書を参考にブログを進めている。今日の具体的方策第3弾は「内なる思いをエネルギーにする力」だ。簡単に言うと、心の中にしまってあることが、苦しい思いではなく、「これって自分しか知らない大事なこと!」って愉快痛快に感じることを持っていると良いということらしい。

 以前ブログ「その27」で紹介した女性の「この歳で人を好きになってもいいんですよね」という言葉は、あくまでカウンセラーに新しい一歩を踏み出そうとする自分の思いを伝えたもので、身近な人には秘密にしていることだろう。でも、その「ちょっと秘密」があることがシニア世代にはワクワク感というか、当たり前の毎日に温かいものを与えてくれるのだろう。

 人にはいえない秘密が、若い頃はストレスをため神経症を引き出す要因になることが多いものだが、歳を重ねた熟年世代には意外と軽い感じの受け止めとなっていることが多い。本では幼児期の発達心理学で、「代用物」の例を挙げている。大好きなパパやママがそばにいることがままならない状況の時、大事にしているぬいぐるみや毛布、おもちゃなどをその愛する人の代用として肌身離さず持っていることで安心する。もちろん成長すると共にそれが必要なくなってくるとき、親離れのプロセスに差し掛かるのだ。

 退職した世代は、社会からフリーになり自由を感じることはありがたいが、人とのつながりまで薄れてしまうのは寂しい。幼児のようなセーフティ・ブランケット(安心毛布)の代わりに、「私だけの秘密」を楽しんだり、大好きな人からもらったプレゼントを身近に置いたりすることで、心がワクワクすることにつながるのだろう。実現するかどうかにこだわらず、若い時のような熱い想いを、日々の生活のエネルギーにつなげられたら楽しいだろう。(続く)