自分と社会を見つめる科学 その21

 壮年期の分析をしてきたが他人事ではなく私自身にとっても大きな転換点だった。30代後半から40代初めにかけて、家庭や仕事で大きな変革の年となった。

 脳科学者が、女性は7年ごとに、男性は8年ごとに心理面での大きな変革の年を迎えるというが、思い返してみるとよく当たっている気がする。学生結婚をした妻は、結婚12年目ごろから家庭で育児だけをする生活が納得できず働きたいと言い出し、素直に賛成すればよかったのに条件をつけてしまい、結局14年目「教師としては尊敬しているけど夫としては認められない」と言われ、私が粘って足掛け3年話し合い、16年目互いに新しい生活を踏み出すことになった。その16年目は男の変革の年。

 二人で納得の上の新しい生活だったので、私は翌年には新しい家庭をスタート。合唱にはまっていた生活から、教育に本腰を入れる生活へ転換。その研究姿勢が評価されて附属学校へ転任。そこで、自分のそれまでの指導を根本的に見直す大転換。いつかこのブログにも書いた「駒感覚から差し手感覚」の違いに気づき、子どもたちの中にある素晴らしさをいかに引き出すかを中心に指導改善。家庭生活でも「性格は簡単に変えられないけど、生活は変えられる」と自分に言い聞かせ、夫、父親としてなすべきことをやる努力をするように。

 仕事と家庭、厳しさと優しさ、教えることと学ぶこと、いろいろ対極にあるようなことの統合が図れるようになってくることで、自身のアイデンティティーを確かなものにしてくることができたように思う。それぞれが相反することではなく、その目指すものを見つめる時、どちらも大事なものに思えてくることが大事なのだろう。

 そして、40歳代半ば以降順風満帆の人生が送れていたように思うが、その慢心は身近な人に少なからず嫌な風を吹かせていたように思う。次に訪れる老年期が平和になるためにも、もっと心理面での分析を怠ってはいけなかった。次回から、老年期へと進もう。(続く)