自分と社会を見つめる科学 その5

 学業は社会に出るまで続く。学ぶことで視野、専門性が広がり高まる。ただ「公的自己意識」つまり自分の存在を他者の目線で意識し、「自分とは何か」とアイデンティティーを獲得するには、先生や仲間との活動、身内との生活だけでなく、直接関係のない立場の人たちと社会的つながりを経験することがとても重要だと思う。それについて非常に敏感な青年期の中高生にとって、今回のボランティア活動はとても意義深いものだったろう。

 生徒の書いた反省には、専門書を参考に書いたのではないかと思うぐらい鋭いものがたくさんあった。(斜体文字は生徒の言葉の引用)

 

「今までボランティアは、災害にあった所へ行ったりするものだと思っていましたが、児童センターや高齢者施設へ行き、社会を学ぶこと、これもボランティアなのだと体験して初めてわかりました。」

「……困っている人に何をしてあげたら良いかどうするべきかではなく、共に考えながらお互いを知りたいという気持ちを大切に今後過ごしていくことが一番大切なんだと思いました。僕はボランティアは『ともに考えながらお互いを知る活動』だと思います。」

「サマチャレの経験したことで、自分が今必要なこと、やらなければならないことなどを高齢者の人に沢山教えてもらった。」

「(私が考えるボランティアとは)人と関わることで机上だけの勉強とはまた違う『学び』を得ることができる(ことだ)」

 

 直接つながりのない高齢者・障害者・児童などと出会い、まず相手を理解し、自分がなすべきことを考えるというサマチャレ体験。しかも相手の立場で自分の役目を考えるという状況は、青年期を過ごす上でぜひ体験して欲しいことだ。その中で、自分の感性や判断力、実行するための経験の豊かさを問われる。他者から評価されるのは仕事ではないので良いとして、自分自身にとっては生きていく価値そのものを問われるものになる。

 

「子どもの感情の表現の仕方や、どういった言葉遣いをすれば伝えたいことを子どもに伝えることができるといったことについて、自分なりに知ることができたのでよかったと思う。」

「障がいを持った人と関わったり会話したりすることで、自分にはない物の見方があって接していて楽しかった。」

 

 学校や家庭では学べないことを学ぶ体験を通して、自分というものを社会的な視点から見つめることで、目指す自分らしさをはっきりとイメージできるようになってほしいものだ。(続く)